経営・戦略

2026.11.02 13:30

大林組の暗黙知を組織知へ変えるAI戦略、DX投資975億円に込めた覚悟

佐藤俊美|大林組代表取締役社長 兼 CEO

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

同部署では、さまざまなデータソースを自動的に集約できる「データ一元化プラットフォーム」を構築し、世界中の公開情報を収集・分析している。例えば、企業が開示する事業リスクの定性情報を約60のリスク項目で分析すると、産業ごとの課題が浮かび上がり、顧客自身も、大林組も気づいていなかったニーズが見えてくる。

advertisement

これらの分析の元となるデータはダッシュボードで全社から閲覧できるようにした。産業連関表を使って、中東情勢による原油価格の上昇がどの程度のタイムラグで建設物価に波及するかを試算したり、過去の自社株買いの規模や頻度と株価上昇が続く日数の関係を分析し、資本政策の判断材料にしたりもしている。AIがなければ何カ月もかかった検証が、今は2~3時間で上がってくるという。

「まずは社内の各部署から無料で仕事を受けて、データがいかに重要で便利なのかを知ってもらうことが大切です。(MI部の)彼らには、いずれ(大林組から)独立できるようになれと言っているんです。それを心の支えに頑張っていると思います」

業務変革のなかからパーパスを見いだす

AIと人間の融和が進むなか、組織はどこへ向かうべきなのか。佐藤は、今の大林組はパーパス経営などの教科書的な経営論とは「ベクトルが逆かもしれない」と話す。

advertisement

「従業員が質の高い判断をする人材の集団になれば、ここにこういう課題がある、これが実は我々の新しいパーパスだよね、となる。業務変革を続けるなかで、向かう先が見えてくるのかなと思っています」

佐藤自身は、異動し環境が変わるたびに「自分が部長だったらこうする」というレポートを書き続けてきた。パリに赴任した90年代には、大林組と同規模だった欧州のゼネコンが携帯電話会社を立ち上げたり、テレビ局を買収したりする様子を本社に報告した。

一蹴されたが、彼らは今や売上高も社員数も10倍以上に成長している。当時の佐藤自身も、コングロマリット化した欧州企業が成功するかどうかは半信半疑で見ていたという。それでも、「30年という時間軸があれば、規模の大きい会社でも本当に大きく変われる」と実感するきっかけになった。

佐藤が行く先々でレポートを書いていたころは、自分の目と耳で情報を集めて仮説を立て、検証も自分の頭のなかでするしかなかった。だが、今はビジネスの情報収集から仮説検証までAIが手助けしてくれる。

「諸先輩が積み上げてきた経営基盤を生かしながら、一定程度リスクを取って挑戦するチャンスだと思います。ぜひ、若い世代を中心に、『いずれ我々はこうなるんだ』というストーリーを描いてほしいです」


大林組◎日本を代表する大手総合建設会社(スーパーゼネコン)のひとつ。1892年創業。国内建設事業を中核に、海外建設事業、エンジニアリング事業、開発事業、グリーンエネルギー事業、新領域ビジネスなどを手がける。

佐藤俊美◎早稲田大学政治経済学部を卒業後、大林組に入社。北米統括事務所副所長や財務部長、経営企画室長などを経て、2018年取締役、19年常務執行役員、22年専務執行役員、23年副社長執行役員。24年に代表取締役となり、25年から現職。

文=村上 敬 写真 =淺田 創 ヘアメイク=Kunio Kataoka(AVGVST International)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事