重野はCENTUMを「AIを搭載するプラットフォーム」と位置付けている。
「今の時代、誰がもうけているかというと、プラットフォームをもっている企業です。CENTUMは99.99999%止まらずに動き続けていることを毎年、品質保証部が確認しています。お客様からは『CENTUMにAIを載せるのなら安心だ』とよく言われます」
こんなエピソードがある。重野が先日、中国に行った時のことだ。中国政府は、国内で生産された製品や部品を優遇する措置を講じている。だが、中国国営企業でも新規でCENTUMを採用したいと言ってもらえるケースがある。
「どうして当社の製品を使うのか」。現地企業のトップに重野がそう聞くと、「CENTUMには50年以上の実績があるし、YOKOGAWAの製品なら信頼できる」という声が返ってきたという。
「実際にオーダーをいただいたので、本気でそう思っているのでしょう。中国国営企業からの受注においても、まだまだ戦えると思っています」
スピードと安全性をどう両立するか
とはいえ、24時間365日、常に正常な稼働が欠かせないミッションクリティカルな領域にAIを導入するには、顧客にも相応の覚悟が求められる。しかも、オイルやガスのプラントだ。ミスがあれば爆発したり、環境に影響を与えるものが流出したりしかねない。プラントにAIを適用するには、安心・安全とセットであることが絶対条件となる。
AIの「暴走」が世界的に話題になるなか、CENTUMに搭載された自律制御AIはクローズドなデータを効率的に学習することに特化している。加えて、万が一のときにはプラントを安全にシャットダウンさせるセーフティシステムや、サイバーセキュリティのシステムなども併せて提供している。
「安心・安全や信頼を失うと、当社を含めた日本企業は生き残れない」
変化の激しいこの時代に、意思決定や実行のスピードと安心・安全をどう両立するのか。AIでビジネスの拡張を目指す企業の多くが抱える課題だ。やってみないとわからないからこそ、ゼロイチを切り開くのには時間がかかる。
ここでモノを言うのが、これまで長年にわたり築き上げてきた顧客との信頼関係だ。試しにひとつ導入してもらい、実績を積み上げ、安心・安全に稼働できることを示せば一気にオセロをひっくり返せる可能性がある。
「IA2IA」(Industrial Automation to Industrial Autonomy/産業における自動化から自律化へ)。横河電機が描く製造業の姿だ。これは地政学リスクが高まる現代のニーズにもつながっている。
「今、自律制御AIの導入にいちばんドライブがかかっているのが中東エリアです。命を守るために現場で働く人たちを退避させるとなると、現状ではプラントも止めなくてはいけない。プラントの稼働を自律化できれば、人がいなくてもエネルギーを供給できる」
自律化は、効率化や省人化のためだけでなく、人を守り、暮らしを守るための術でもあるのだ。


