サイエンス

2026.10.30 16:00

睡眠の謎を解く「見過ごされた小さな分子」、オレキシン発見の衝撃と新薬への道

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ナルコレプシーは自己免疫疾患の一つ

ナルコレプシー1型は、日中に突然、何の前兆もなしに、強い眠気の発作が引き起こされる病気だ。また、カタプレキシー(情動発現性筋無力発作)を併発する患者も多い。これは笑いや驚きなどをきっかけに、意識は完全に保たれているにもかかわらず、突如として短い時間筋肉のコントロールを失う現象だ。

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ナルコレプシー1型の場合、脳の視床下部にある「オレキシンを産生するニューロン」の大半、あるいはすべてが失われている。オレキシンを産生するニューロンは、一度破壊されると再生することはないため症状が慢性化する。特定のニューロンだけが喪失することから、発生の原因に免疫系が絡んでいることが示唆されている。

ナルコレプシーは、体が攻撃すべき対象を区別する過程に関わる免疫遺伝子の変異形と強い関連がある。血液中や脳脊髄液中に存在する一部の免疫細胞が、オレキシンを生成するニューロンを標的として攻撃する現象がみられ、これは環境による刺激をきっかけとする可能性が高い。

オレキシンを産生する細胞は、一度失われると復活することはない。オレキシン自体を薬として投与することもできない。そのため、脳内のオレキシン受容体を活性化させ、ナルコレプシー患者が失われた覚醒状態を維持するためのシグナルを回復させる新薬が開発されている。

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ナルコレプシーの治療は、何十年ものあいだ、中枢神経刺激薬や抗うつ剤などを使った対症療法が主流だった(米国ではγ-ヒドロキシ酪酸ナトリウムが用いられることがあるが、日本国内においては麻薬に指定されており処方されない)。しかし、こうした薬はどれも、失われたオレキシンからのシグナルを代替するものではない。

最近の臨床試験では、オレキシン受容体を活性化させる新薬がナルコレプシー患者の覚醒持続を促し、カタプレキシー発作の頻度を減らす効果があることが裏付けられている。新薬の長期的な安全性や他の睡眠障害に対する有効性については、今のところまだ確認されておらず、今後の検証を待つ必要がある。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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