その結果、一つの道筋が生まれた。人の疾患に関連する「ドラッガブル(創薬が可能な)」タンパク質はおよそ1万種あるが、現在承認済みの治療薬が存在する数百のタンパク質だけでなく、はるかに多くのタンパク質を治療に結びつける道が見えてきたのだ。希少な病気やがん、慢性疾患、新しい感染症の脅威に対して精密に介入する上で、重大な動きと言える。
AIの成果は、即時性があり拡大している
AIはすでに、医療業務や創薬、個別化医療、診断などの領域で、目に見えるかたちで恩恵をもたらしている。多様なデータや情報をまとめて処理するマルチモーダルAIは、画像データやゲノム情報、電子カルテ記録といったさまざまなデータを統合することで、検出精度の向上と、治療反応の予測、重症度分類を促進している。
タンパク質構造の予測と、候補薬剤の特定は、生成モデルやグーグル・ディープマインドが開発した「AlphaFold」のようなツールで迅速化している。AIが発見した化合物を含むFDA(米食品医薬品局)への申請数は、最近300件を超えた。また、英国のIsomorphic Labs(アイソモーフィック・ラボ)といった企業は、AIが設計した免疫疾患や腫瘍の新薬候補について、ヒトを対象とした初期臨床試験の準備を進めている。
複数の段階を踏むケア・パスウェイ(治療やケアの流れ)は合理化され、患者個別の転帰は、デジタルツインや自律型システムでシミュレーションされている。予測分析は、医療の物流管理やリソース配分を最適化し、事務作業の自動化によって、臨床医の業務負担が軽減している。
世界経済フォーラム(WEF)によると、医療分野のAI市場は年率およそ43%で成長し、2032年には4910億ドル(約77兆円)に達する見込みだ。(参照:「Quantum vs AI in healthcare: How they differ and why leaders must prepare for convergence」世界経済フォーラム、2025年12月)
こうした進歩は本物であり、急拡大している。しかし、極めて複雑な分子間の相互作用、超早期における疾患の兆候、そして最高次元のマルチオミクス(生体分子の網羅的解析)データセットは、古典的コンピューティングにとって依然として大きな課題であり続けている。
隔たりを埋める量子技術が着実に進歩
こうした隔たりを埋めるのが量子センシングであり、量子通信であり、量子コンピューティングだ。理論が初期の実用化に向けて動いていることは、研究機関の具体例で証明されている。


