無臭なのに「屋内」は不快に
もうひとつの研究では20〜30歳代の日本人女性27人を対象に、屋内と屋外の視覚環境がニオイの感じ方に与える影響を調べている。参加者にはヘッドマウントディスプレイを使って、他者が存在する屋内と屋外の360度画像を提示。そのうえで「汗臭」「生乾き臭」「フローラル調の香料」「無臭」の4種類を組み合わせ、気分の快適度を評価した。

その結果、汗臭では屋内と屋外で快適度に大きな違いはみられなかった。一方、生乾き臭では屋内よりも屋外の映像を見ているときの方が、気分の快適度が高くなる傾向が確認された。また、フローラル調の香りでは環境による大きな違いはない。 興味深いのは、無臭の場合でも屋内と屋外で差がみられ、屋内の方が気分の快適度が低かったことだ。なお、ここでいう「快適度が高い」とは、比較した環境の中で気分の快適度が相対的に高かったことを示しており、汗や生乾き臭そのものを心地よいニオイと感じたという意味ではない。

ニオイと視覚環境による気分快適度
研究チームは、ニオイの感じ方は、そのニオイ自体の快・不快だけでなく、ニオイから連想する発生源や周囲の環境との組み合わせによっても変化する可能性があるとしている。
ニオイの感じ方は視覚にも左右される
今回の2つの研究から、ニオイによる気分の快適度は、場所や他者の存在など、目から入る環境的・社会的な情報の影響を受けることが示された。ただし、いずれも比較的少人数を対象としたVR環境での実験であり、実際の生活環境でも同じ結果が得られるかについては、今後の検証が必要だ。研究チームは、個人差などにも着目しながら研究対象を広げ、現実の生活環境での検証も進めるとしている。
私たちはニオイを鼻だけで判断していると思いがちだが、実際には目から入る情報もその感じ方に影響している。料理のおいしさが見た目にも左右されるように、人間の感覚はそれぞれ独立しているわけではなく、互いに影響し合っている。今回の研究は、そんな五感の複雑な関係を改めて感じさせる結果となった。


