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海外

2026.10.25 07:21

Z世代の心を守る──メンタルヘルス危機に挑む若手起業家たち

Adobe Stock

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若者のメンタルヘルス危機に挑む、新世代のスタートアップ

5年前、コロンビア大学で神経科学と心理学を学ぶためブラジルから留学したニコル・ピレス(23)は、周囲の優秀な学生たちが学業のプレッシャーや実家から離れた生活の中で苦しんでいる姿を目にした。

「多くの友人が摂食障害やバーンアウト(燃え尽き症候群)、うつ病などの不調を発症するのを見ました」と彼女は語る。2023年には親しい友人の1人が自死し、彼女に深い衝撃を与えた。

著書『The Strong Brain: How Neuroscience Explains Addiction, Depression, and the Roots of Psychiatric Disorders(強い脳:神経科学で読み解く依存症、うつ病、精神疾患の根源)』を執筆した際、友人や同僚から、症状が悪化する前に早期発見できるよう、自分のメンタルヘルスの状態を追跡できる方法があればいいのにという声が寄せられた。

そこで彼女は、ニューヨーク市を拠点に「ソウル・ヘルス(Soul Health)」を立ち上げた。優秀な学生や起業家をターゲットに、月額97ドル(約1万円)でバーンアウトの引き金となる要因を特定する週次クイズなどを通じて自身のメンタルヘルスを把握できる月額サブスクリプションや、197ドル(約3万円)の4週間の「メンタルフィットネス・プログラム」を提供している。

このサービスは診断ツールを提供するものではなく、「自己理解」に重点を置いているとピレスは説明する。利用者は、医師や公認心理師などの提携支援機関の紹介を受けることもできる。「私たちの目標は、バーンアウトを減らすこと、あるいは少なくともそれが近づいていることに気づき、どう対処し、その状況から脱出するべきかを把握して、人生を最大限に生きられるようにすることだ」と彼女は語る。

2026年2月に創業し、同年7月に現在の形態で再始動した同社には、現在61人の加入者がいる。単独起業家であるピレスは自己資金で事業を賄い、サービスを支えるソフトウェアも自ら開発した。

若者のメンタルヘルス危機に挑む

ビジネスインテリジェンス企業Flier Biのデータによると、メンタルヘルステックはパンデミック期に急成長を遂げ、2020年だけで250社が設立された。Flier Biによれば、現在のメンタルヘルステックのエコシステムには2158社が含まれる。また、別のデータインテリジェンス企業VCBackedによれば、2026年にはベンチャーキャピタルの出資を受けたメンタルヘルススタートアップが497社以上存在し、平均調達額は1120万ドル(約17億6000万円)に達している。

小規模ながら意欲的な若手起業家グループが、同世代を支援しようとメンタルヘルス分野のスタートアップを立ち上げている。投資家も若者のメンタルヘルス危機に注目している。ロック・ヘルス(Rock Health)の調査によると、デジタル行動ヘルスケア分野へのベンチャーキャピタル投資のうち、若年層向けメンタルヘルススタートアップに投じられた割合は、2018年の15%から2023年には34%に増加した。

うつ病や不安障害などのメンタルヘルスの課題に悩む若者の存在は、世界中で懸念を引き起こしている。疾病対策センター(CDC)の調査によると、2025年には高校生の33%が継続的な悲しみや絶望感を抱えており、過去12カ月間に14%が真剣に自殺を考えたことが分かった(2023年からはやや改善)。一方、世界保健機関(WHO)の調査では、10歳から19歳の青少年の7人に1人が何らかのメンタルヘルスの不調を抱えている。WHOは、デジタルメディア、学校、医療機関、地域プログラムがメンタルヘルスの増進と予防において重要な役割を果たす可能性があると指摘する。

複合的なプレッシャーの集中

なぜこれほど多くの若者が危機に瀕しているのか。子どもやティーンエイジャー、家族へのカウンセリングや評価、保護者への支援を提供するメイトランド・メンタルヘルス(Maitland Mental Health Co.)の代表で公認学校心理士のファラ・ダウンズによると、原因は1つではないという。

「10代の若者は、学業のプレッシャー、友人関係、家族のストレス、アイデンティティへの疑問、将来への不確実性と向き合っている」と彼女は書面で述べている。「SNSは他者との比較を生み、友人同士のトラブルから距離を置くことを難しくさせる。睡眠不足や孤独感、パンデミックによる混乱も影響している。こうしたプレッシャーが積み重なる一方で、適切な支援を得ることは必ずしも容易ではない」

若者が助けを求めた場合でも、費用、移動手段、スケジュールの調整、ウェイティングリスト(支援待ちリスト)といった障害に直面することがあるとダウンズは指摘する。彼らの生活になじみやすく、手頃な価格でアクセスしやすい選択肢があれば、助けを求めやすくなると彼女は言う。

「若者が同世代のためにサービスを作りたいと思う理由はよく理解できる」と彼女は話す。「自身が苦しんだ経験や、友人を心配しながらもどう助ければいいか分からなかった経験があるのかもしれない。また、既存のリソースに何かが欠けていると感じているのかもしれない。サービスを作ることで主体的に行動できるようになり、彼らの視点は大人が『10代の若者が実際に何を求めているか』を理解する手がかりになる」

しかし、重大な健康上の懸念については、専門家からの支援を確実に受けられるようにすることが不可欠だとダウンズは付け加える。「こうしたサービスのいずれにおいても私が知りたいのは、誰が指導に関わっているか、何を約束しているか、そしてサービスが提供できる以上の支援が必要になった場合にどう対応するかだ。コンテンツの開発や安全性の確保に関しては、資格を持つメンタルヘルスの専門家が関与すべきだ」

10代向けに最適化されたメンタルヘルスアプリ

スカーズデール高校の同級生だったチャーリー・ウルフとテオ・ケルテス(ともに18)は、2024年5月、10代向けメンタルヘルスアプリの開発を手がける「ステイ・マインドフル(StayMindful)」でタッグを組んだ。彼らの目標は、不眠症や先延ばし癖といった、多くの10代が抱える課題の解決を支援することだ。

「呼吸法に関する大手アプリはあるが、それらはすでにニーズが満たされているユーザー向けだと感じている。10代の若者は既存のコンテンツに親しみを感じず、自分向けではないと感じており、そこに独自の市場機会がある」とケルテスは語る。「アプリとして、フォーカスグループを通じて『10代によって、10代のために、10代とともに』構築することで、10代が共感できるコンテンツを提供しようとしている」

彼らはアクセスのしやすさも重視した。ウルフが先延ばし癖を克服するためのアプリを探した際、「有料のペイウォールの背後にあるか、長い本を読むか、長いポッドキャストを聴く必要があった。10代の自分が無料でアクセスでき、簡単に理解できて、実践的なアクションを起こせるリソースが1カ所にまとまった場所はなかった」と振り返る。

彼らの着眼点は当たっていた。ステイ・マインドフルは現在、32カ国で9000件以上ダウンロードされている。アプリでは呼吸法のエクササイズや日々の名言のほか、10代が執筆しメンタルヘルスの専門家が検証した実践的なコンテンツを提供している。YouTubeのチュートリアルでプログラミングを学んだウルフがアプリを開発し、ケルテスは15歳で資格を取得した超越瞑想(TM)のノウハウを活かした。ウルフの兄でテキサス大学オースティン校の学生であるハリー・ウルフも共同創業者兼CFOとして参画している。

創業メンバーは250人以上の生徒を対象に学校でのフォーカスグループテストを実施し、「気持ちを落ち着かせる効果」で5点満点中4点の評価を得た。開発の過程では、自校のスクールカウンセラーや保健の教員からの助言も受けた。

ステイ・マインドフルは「フリーミアムモデル」で運用されており、10代の若者は無料で利用できるが、共同創業者らは学校や課外プログラムにライセンスを販売し、生徒の端末にアプリを導入してもらう計画を進めている。

孤独を解消し、つながりを生み出す

一部の若い起業家は、ECブランドを通じてメンタルヘルスの重要性を周知しようと取り組んでいる。

フロリダ州フォートローダーデールを拠点とするグラフィックデザイナーで「セルフケア・シャツ(Self-Care Shirts)」の創業者であるアリッサ・オストロフ(34)もその一人だ。フロリダ大学を卒業したオストロフは、疾病対策センター(CDC)でシニアグラフィックデザイナーとして5年間勤務し、新型コロナウイルス感染症、エムポックス(サル痘)、がん予防意識向上、抗生剤耐性に関する公衆衛生キャンペーンを手がけた。

彼女は連邦政府の人員削減の一環として2025年4月に解雇された。しかし1カ月も経たないうちに、「セルフケア・シャツ」を立ち上げた。これは、アプリ「Procreate」を使ってiPad上で自ら手描きしたデザインを採用した、メンタルヘルスの意識向上を図るアパレルブランドだ。彼女のステッカー、シャツ、パーカーには「私のセラピストはあなたの名前を全員知っている」「考えすぎは私のスーパーパワー」といったフレーズがプリントされている。

「どのフレーズも、元々は私自身が必要としていた言葉から始まっている」とオストロフは話す。

オストロフによると、昨年の同事業の売上高は10万4000ドル(約1630万円)に達した。1600人以上の顧客を獲得しており、黒字化も達成しているという。彼女はオンラインショップでシャツを販売し、InstagramやFacebookで宣伝しているほか、最近では「Modcloth(モドクロス)」などのブランドとのパートナーシップを通じた展開も行っている。

「間違いなくニーズが存在しており、私のシャツのおかげで自分の存在が認められたと感じ、世の中で孤独を感じなくなったというメッセージを常に受け取っている」と彼女は語る。

メンタルヘルス分野の他の起業家と同様に、オストロフの目標は意識を高め、コミュニティを構築することだ。「私たちがこの問題について話せば話すほど、互いにつながり、問題に光を当て、コミュニティを形成して結束することができる」と彼女は語った。

(forbes.com 原文)

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