AIを軸に会社を築く手法から、他の企業は何を学べるか
モデルナが出発点にしたのは、AIがもたらす機会を軸にして会社を築くにはどうすればよいかという単純な問いだった。
本業では、決まりきった作業でありながら時間のかかる技術的な仕事の自動化に力を注ぎ、チームがより多くの仕事を、より速くこなせるようにした。
創業時からテクノロジーが土台、AI導入を阻むデータの分断をある程度回避
こうした自動化ができたのは、モデルナが創業当初から、テクノロジーとデータ、ソフトウェアを中心に事業を組み立ててきたからである。この土台があったおかげで、モデルナは、古くからのシステム基盤を抱える企業でAIの導入を難しくしている問題をある程度避けることができた。その問題とは、データがばらばらに分かれていたり、取り組みが互いにつながっていなかったりする状態である。
AIツールは上から押しつけず現場が自作、チームの垣根を越えて広げた
モデルナは、ツールや仕事の手順をすべて上から押しつけるのではなく、従業員が自分でAIツールを作るよう促した。理由は単純で、AIがどこで役に立つかを一番よく分かっているのは、実際にその仕事をしている人たちだというものである。
さらに、研究開発の規模を大きくするなら、他のすべての部門もそれに歩調を合わせなければならないことを、モデルナは理解していた。そこで、チームや部門の垣根を越えて、AIツールを広げていった。
AI推進役を育成、法務部門のChatGPT Enterprise利用率は100%
モデルナは、AIを「人」にかかわる優先課題と位置づけた。具体的には、社内でAIの活用を広める推進役である「AIチャンピオン」を育て、経営陣が後押ししていることを目に見える形で示した。こうした取り組みによって、AIを使うことが日々の習慣として根づいていった。法務部門からは、ChatGPT Enterpriseの利用率が100%に達したという報告も出ている。
AIはまだがんを治せない、有望な技術を生かすには人材と組織の支えが欠かせない
AIは、がんを治すという期待に、まだ応えてはいない。それでも、個別化治療の進展を見れば、がんを治すという大きな目標を掲げることがなぜ大切なのかが分かる。モデルナの事例が示す、より広い教訓は、AIの可能性を現実のものにするには、研究室での画期的な成果だけでは足りないということだ。有望な技術を実際の成果に結びつけるには、データと人材のスキル、そして組織の支えが欠かせない。


