mRNAを使う治療法の開発は、ソフトウェアエンジニアリングの課題
モデルナは、mRNA(メッセンジャーRNA)を使った治療法を開発するために設立された会社である。ごく簡単に言えば、mRNAを使った治療法は、特定のたんぱく質を作るよう細胞に指示を与えることで、病気の予防や治療に役立てるものだ。モデルナの考え方では、mRNAを使った治療法の開発はソフトウェアエンジニアリングの課題に相当する。コンピューターをプログラムするのと同じように、細胞をプログラムするというわけだ。
メラノーマ向けの個別化治療薬、第3相臨床試験で初めて成功した
モデルナがメルクと共同で開発している個別化がん治療薬に、intismeran autogene(インティスメラン・オートジーン)がある。2026年8月、再発リスクの高い悪性黒色腫(メラノーマ)の患者を対象に、この治療薬とがん免疫療法薬のキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)を併用する臨床試験の結果が示された。キイトルーダだけを使う場合に比べて、手術後にがんが再発せずに過ごせる期間が長くなった。
個別化したmRNAのがん治療薬で、第3相臨床試験(承認申請の前に、多くの患者で有効性と安全性を確かめる最終段階の試験)が成功したのは、インティスメラン・オートジーンが初めてである。ただし、発表されたのはトップライン結果(主要な評価項目に関する最初の集計結果)で、詳しいデータは米国時間10月22日にメルクとモデルナが公表した。
腫瘍の遺伝情報をもとに薬を設計、最適化にAIを使う「mRNA Design Studio」
この治療法では、患者の腫瘍から得た遺伝情報をもとに、その患者の免疫系ががんを見分けて攻撃できるよう手助けすることを狙った治療薬を設計する。モデルナのプラットフォーム「mRNA Design Studio」は、AIを使ってmRNA設計の最適化を助けるもので、コンピューターによる解析の道具を開発の工程に取り入れている。
生成AIの「Dose ID」が投与量を選んだ根拠の分析を助け、検討は人間が主導する
もう1つの取り組みである「Dose ID」は、生成AIを使って、臨床試験のチームが大量のデータを分析・可視化したり、投与量を選んだ根拠を検証したりするのを助ける。チームの判断を支えるための仕組みで、データの検討を主導するのは人間の専門家である。
定型的な技術作業の自動化に加え、研究開発以外でも求められる効率化
研究開発の定型的な技術作業を自動化することで、モデルナは各チームが成し遂げられることを増やそうとしている。だが、製薬会社が新しいものを生み出し、新製品を世に送り出す力を大きく伸ばすには、研究開発以外の部門でも効率を高める必要がある。
社内チャットボットをきっかけに、2カ月で750のカスタムGPTが作られた
OpenAIの技術で作られたモデルナの社内チャットボット「mChat」は、生成AIを社内に広く根づかせるきっかけになった。その後に企業向けのChatGPT Enterpriseを導入すると、従業員は専用のアシスタントを自分で作れるようになった。用途は、契約書の要約、社内ポリシーに関する質問への回答、投資家向け決算説明会の資料作りといった作業である。
OpenAIによれば、モデルナでは、ChatGPT Enterpriseを導入してから2カ月のうちに750のカスタムGPT(特定の用途向けに作る、ChatGPTの専用版)が作られた。利用者は1人あたり週に平均120回、ChatGPTとやり取りしていた。


