購入者の承認は、AIに支払い権限を与えるだけでは証明できない
マスターカードの「Agent Pay」に関連する分析サービスは、取引をAIエージェントが開始した確率を推定する。米国での試験に向けて判定スコアの提供を進めており、今後は行動やリスクに関する、さらに詳しい情報を加える計画だ。銀行は通常と異なる購買行動を判断する材料にできるが、購入者自身が取引を承認したかは別途確認する必要がある。
「銀行は、誰がどこで支払い、行動が通常と異なるか、不正の疑いがあるかを基に取引を評価します。AIエージェントが買い物をする環境では、誰が仕事を委任したのか、どのような権限を与えたのか、AIエージェントが許可された範囲を守ったのかも、確認できなければなりません」とゴパールは語る。
マスターカードが構築を進める仕組みは、AIエージェントの身元と購入者の意思を示す証拠に、支出額などの制限を組み合わせる。マスターカードはグーグルと「Verifiable Intent(検証可能な意図)」を共同開発し、オンライン認証技術の標準化を進めるFIDOアライアンスに提供した。購入者による承認の証拠を改ざんされにくい形で残す技術だ。
サイト閲覧の記録とAIの身元情報を取引の判断に生かす
ウェブ上の多くのサイトにネットワークサービスを提供するクラウドフレアは、AIエージェントが販売店のサイトを訪れたことを把握できる。マスターカードは、サイト訪問後に発生する決済の情報を把握する。両社は、プライバシーを保護した環境で閲覧情報と決済情報を突き合わせ、サイトを訪れたAIエージェントと支払ったAIエージェントが一致するかを銀行が判断できるようにする方法を検討している。
スカイファイアは、取引を実行しようとするAIエージェントの身元を識別・確認する「Know Your Agent」技術を提供する。ただし、AIエージェントの身元が確認できても、購入者が特定の買い物を許可したことにはならない。銀行と加盟店は、その購入に対する承認を別途確認する必要がある。
マスターカードの白書「Trust for Agentic Commerce」は、同社のプラットフォームに登録していないAIエージェントも対象にしている。銀行や加盟店が、行動の特徴やリスクを示す情報に基づいて取引を評価する方法を説明している。
AI決済の不正を継続監視する構想、検知精度は非公表
ソフトウェアが取引を開始したと分かるだけでは、購入者の承認を裏付けられない。銀行は支出上限を引き下げたり、支払いを認める前に購入者へ確認を求めたりできる。AIエージェントの活動を対象とする不正検知モデルは不審な行動を評価し、レコーデッド・フューチャーの脅威情報は、不正行為を企てる者と、その活動に使う基盤を追跡する。登録済みであることを恒久的な安全保証とはみなさず、エージェントの行動が変化したり、未知の仕入れ先と取引したりしてもリスクを評価し続ける狙いだ。
ただし、マスターカードはサービスの有効性を示す十分な実績を公表していない。不正の検知精度や、正当な取引が拒否される件数をどれだけ減らせたかを示す数値は明らかにされていない。導入を構想する「Agent Pay Ready」マークは、プログラムの要件を満たしたAIエージェントや加盟店を示すものだが、白書には開始日が記載されていない。


