「いたちごっこ」に終止符を
本誌が指摘しているように、隠密な休暇というトレンドの根底にあるのは恐怖心だ。従業員は休暇を取ることで批判されるのではないかと懸念している。おそらく私たちの多くは、そうした環境で働いた経験があるだろう。休暇を取ることを前もって知らせると、「いいわね」という冷ややかな返事が返ってくるような職場だ。そうした職場では同僚間の基本的な信頼関係が欠けている。
エンゲージメントを高めることによる間接的なメリットの1つが信頼の構築だ。20年にわたる経営経験から、エンゲージメントの高い従業員は自分の仕事だけでなく、チームメートのことも大切にすると実感している。必要なときには仲間を支えたいと思っており、自分が支援を必要としているときにも、率直にその旨を伝える。休暇に対する不満は一般的ではなく、むしろ例外だ。
リーダーは、交流イベントやチームビルディング活動を企画することで信頼関係の強化を手助けできる。月に数回チームのためにテイクアウトの食事を用意するなど、ちょっとした習慣でも絆を深めることができる。
また、信頼の向上は、従業員が定期的に協働することにも役立つ。例えば筆者が経営するJotform(ジョットフォーム)では、部門横断型チームで働くことで自然に信頼と相互理解が築かれる。毎週金曜のデモデー(成果発表の場)に向けて準備するという取り組みによって、新しく加わったばかりのメンバーであっても瞬時に仲間と結束する。こうした交流や協働の機会が定期的にあることで、信頼は人為的ではなく、自然に生まれたものとして感じられるようになる。
従業員のエネルギー回復法を信頼する
私は毎年、トルコの田舎にある実家のオリーブ農園で1週間を過ごす。日中は木々の間を縫うように歩き回り、枝を剪定し、摘みたてのオリーブを選別する。夜は家族とゆっくりと長い夕食を楽しむ。仕事から完全に切り離された気分になる。
とはいえ、毎晩あるいは1日おきに30分ほどは、緊急の用件が入っていないかを確認する時間を自分に許可している。1週間が終わるころにはすっかりリフレッシュし、オフィスに戻る準備ができている。だが同時に、私は自分自身のこともわかっている。1週間完全に連絡を絶ってしまうと、かえってストレスになるのだ。そのため、状況を確認するための時間枠をいくつか設けている。
実際のところ、休暇中の仕事について全ての従業員が同じように感じているわけではない。しばらく姿を消したいと感じる人もいれば、時折連絡を取るほうがストレスを感じずに済む人もいる。明確なルールを設けるのではなく、休暇中のエネルギー管理方法は従業員任せにしたい。リーダーは柔軟性も含め、何を期待しているのかを従業員にはっきり伝えることができる。
リーダーが目指すべきは、連絡に関する厳格なルールを設けることではない。従業員が休暇を取る際、その事実を隠す必要のない十分な信頼関係を築くことだ。


