欧州のAI自立に向け、モデル開発用のデータや技術を共有
ミストラルAIの産業向けAIへの進出は、欧州域外のAI企業への依存を減らそうとする取り組みとも重なる。
OpenEuroLLMが進める、多言語AIの学習資料とデータの公開
欧州の多言語AI開発計画「OpenEuroLLM」は、学習用資料やデータセット、性能を評価する方法を公開しながら、複数の言語に対応するAIを開発している。OpenEuroLLMによると、2026年9月までに整備した資料集には、学習データ250テラバイトと36言語にわたる合成データ4兆8000億トークンが収録されている。学習途中のAIモデルの状態を保存したデータも数百件ある。トークンは、AIが文章などを処理する際の単位だ。
エヌビディアとミストラルAIは設計支援AIの共通評価基準を計画
エヌビディアも「PhysicsNeMo」という開発基盤を公開し、技術者や開発者が物理システムの振る舞いを予測する独自のAIモデルを作れるようにしている。
ミストラルAIとエヌビディアは、物理現象を扱うAIや設計エージェントの性能を比較するため、誰でも利用できる評価基準とデータセットを公開する計画だ。技術的な正確さ、複数の設計工程を最後まで実行できるか、処理時間、計算費用などを評価する。共通の基準が整えば、メーカーは提供企業の実演だけに頼らず、異なる手法を比較できる。
重みを公開したAIモデルでも、製造業の技術依存は解消しない
AIモデルの重みを公開することと、産業向けAIシステム全体を自由に利用できるようにすることは異なる。メーカーが重みを公開したAIモデルを自社で動かしても、独自仕様のシミュレーションソフトウェアやエヌビディアのGPU関連技術、再配布できない専門的な設計データに依存する可能性がある。モデルの重みを入手できても、依存関係まで解消されるわけではない。
電力容量1ギガワットを目指すミストラルAI、計算設備は米国技術に依存
欧州のメーカーは、独自の設計データを自社の管理下に置き、欧州内の設備で動かせるAIシステムを選ぶ可能性がある。ミストラルAIも計算基盤への投資を進め、2030年までに設備の電力容量を1ギガワット規模に拡大する目標を掲げている。
ただし、計画されている計算設備の多くは、米国企業エヌビディアのハードウェアとソフトウェアに依存する。欧州企業がAIモデルの運用やデータの管理権を強めても、米国の半導体技術から自立できるとは限らない。
既存の設計ソフト企業とAI開発企業、主導権を握るのは誰か
従来の設計ソフトウェア企業は、数十年かけて専門ツールを開発し、製造企業との関係を築いてきた。AI開発企業は、技術者が設計ツールを使って進めてきた業務の自動化に加わろうとしている。製品開発を支える技術や業務の主導権をめぐり、競争の行方は引き続き注目に値する。


