経営・戦略

2026.10.27 13:30

半導体バブルで最高益更新のオルガノ 超純水トップが挑む独自AI革命

山田正幸|オルガノ代表取締役社長 社長執行役員

他社のSaaS型生成AIには頼らない

財務指標で軒並み合格点以上をたたき出しているオルガノだが、中長期的な企業価値の向上には知財や人材といった非財務資本の強化が不可欠だ。同社では22年ごろから社内で生成AIの活用を開始し、業務の効率化や新たな価値創造に取り組んできた。

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まずは多くの社員が生成AIに触れられるように、SaaS(Software as a Service/サービスとしてのソフトウェア)の生成AIを導入した。しかし、従量課金型のSaaSだと、社員の使用量が増えれば増えるほど運用コストが膨らんでいくという課題が見えてきた。社内文書を扱ううえでは、セキュリティに関連するリスクも看過できない。

そこで同社は、これらの課題を根本から解消すべく独自の生成AI基盤の構築に踏み切った。25年7月に本社での利用をスタートさせ、順次国内のグループ会社に展開。会議の議事録から資料作成、企画アイデアの壁打ち、エンジニアリングの計算、知財や特許関連の管理に至るまで、さまざまな業務に活用している。

利用状況は数字に表れている。26年7月時点で、1日平均およそ200人の社員が自社のAI基盤を活用し、月間トークン利用数は10億にのぼるという。気になる利用料だが、開発費を除けば、独自の生成AI基盤に切り替えたことでコストを大幅に抑えられている。

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「業務の削減時間を労務費に換算すると、理論上は、生成AI基盤整備への投資は7カ月で回収できたことになります」

AIの活用によって、業務の生産性と効率は上がった。では、そこから生まれた人手と時間の余剰分をどこにどう回すのか。これこそが、企業の今後の成長を占ううえでリーダーが向き合うべき重要な問いのひとつである。

現時点で山田が考えているのは、イオン交換樹脂や活性炭、各種フィルターなど、オルガノの強みを生かした機能商品の分野の強化だ。そのために人材の再配置を進める予定だという。新たな市場の開拓にも力を注ぐ。26年2月にはインドに現地法人を設立した。競争の舞台が一層グローバルへと広がりを見せるなか、世界の市場を切り開くことのできる人材の育成も待ったなしだ。

「いちばん大事なのは、当社が得意としているハイエンドの水処理領域で世界トップを走り続けることです。30年にはさらにそのポジションを強化しつつ、より世界に展開している会社でありたい」

この先、オルガノの事業と、同社を取り巻く環境はドラスティックに変わることが予想される。だが、「会社は結局、人が動かしている集合体です。会社の方向性を変えたいと思っても、そう簡単には変わらない」と山田は話す。

「タンカー船のかじを右に切っても、実際に方向が変わるのは何キロも先に進んでからでしょう。それと同じです。だからこそ、社員たちから『また言っているよ』と思われるくらい、大事なことは粘り強く言い続ける。これがAI時代の社長に求められる役割だと思います。起点は常に人間にあります。AIが『こうすればいい』と提案してきたところで、会社はすぐに変わるものではないのです」

半導体需要の高まりという追い風と、参入障壁の高さによる収益基盤の盤石さ。そこに技術伝承AIや自社製生成AI基盤を組み込みながらも、船のかじ取り役は人が担い続ける。AI時代の「本当に強い会社」とは、AIを使いこなす胆力をもった会社なのかもしれない。


オルガノ◎1946年創業の、総合水処理エンジニアリング企業。高度な分離精製技術を強みに、半導体工場向けの超純水製造をはじめ、発電所や医薬品工場などさまざまな産業にオーダーメイドの水処理設備を提供している。

山田正幸◎1959年、愛知県生まれ。85年に京都大学大学院理学研究科植物学専攻を修了後、東洋曹達工業(現・東ソー)に入社。2013年に同社取締役。21年6月にオルガノ取締役専務執行役員に着任。22年6月から現職。

文=瀬戸久美子 写真=淺田 創 ヘアメイク=Kunio Kataoka(AVGVST International)

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