サイエンス

2026.10.28 13:00

小児の遺伝性難病「WAS」に希望の光、自己細胞を使った遺伝子治療で劇的改善

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ウィスコット・アルドリッチ症候群(Wiskott-Aldrich syndrome:WAS)は、遺伝性の希少免疫不全症であり、難治性の湿疹、免疫不全や易感染性、あざや出血が起きやすい(血小板減少や小型化)という3つの症状を特徴とする。この症候群を発症するのは、ほとんどが男児だ。

この症候群の患者が直面する合併症のなかでも、特に危険度が高いとされているのが、繰り返し発生する重症感染症だ。

だが今、ある点滴投与が、この疾病の展望を根本から変える可能性が出てきた。これによって生命の危険を伴う感染症にかかる可能性が大幅に下がるうえ、従来の造血幹細胞移植に加え、治療にもう一つの選択肢が加わったのだ。

この画期的な治療法は、WASの患者を抱える家族にとってターニングポイントとなるものだ。さらには、ターゲットを正確に絞った遺伝子修復の威力を知らしめるものでもある。遺伝性の病気を持つ子どもの、その後の運命を書き換えることさえ可能になるからだ。

2026年9月に『New England Journal of Medicine』に発表された研究では、病気を引き起こす遺伝子を修正した幹細胞を点滴の形で体内に投与することで、WASによって長期にわたって生じる諸症状から子どもの体を守ることができたとしている。

この研究では、WAS患者27人を最長で13年間にわたって追跡調査した。その結果、重症感染症の罹患率は、この治療を受ける前は1年に2回だったのに対し、治療後の6~18カ月では、1年に1回に満たない程度にまで減少したことが判明した。米食品医薬品局(FDA)も、2025年12月にこの治療を認可した際に、重症感染症にかかるケースが93%減少したと評価している。

筆者は、自らの著書『Destiny’s Child No Longer: Rewriting Genetic Fate』の中で、遺伝性疾患に関するシンプルな原則を提唱している。それは、家族の遺伝子検査を行い、早期に疾患を発見し、長期にわたる健康被害が発生する前に、遺伝子そのものを修正すべき、というものだ。

このシリーズの以前の記事でも、生後間もない乳児に対する遺伝子治療から、出生前の胎児期の治療に至るまで、筆者は一貫してこの原則を主張してきた。今回発表された研究は、遺伝性の免疫疾患に関して、遺伝子を修正する手法が大きな成果をもたらすことを示すとともに、早期診断の重要性も裏付けている。

ウィスコット・アルドリッジ症候群が発症する仕組み

ウィスコット・アルドリッジ症候群は、X染色体上に存在する1つの遺伝子の変異によって引き起こされる。男児はX染色体を1つしか持たないため、変異した遺伝子のコピーを1つ持つだけでこの疾病を発症する。一方、女児にはX染色体が2つあるため、たとえ片方に変異があったとしても、2つ目の正常な遺伝子のコピーが、大半のケースで発症を防いでくれる。そのため、母親がこの変異遺伝子を持っていると、本人が無症状のまま、遺伝子が息子に受け継がれる場合がある。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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