サイエンス

2026.10.28 18:00

左右の眼の色が違う虹彩異色症「オッドアイ」、そのメカニズムとデヴィッド・ボウイの事例

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いわば、新たな領域へと広がる入植者のようなものだと考えるとわかりやすい。ほとんどの地域には、均等に人が住みつくが、ランダムな迷いや迂回により、ある谷では入植者がまばらになるかもしれない。片眼の虹彩にたどりつく色素細胞が少なかったり、たどりついてもメラニンの産生量が少なかったりすれば、その眼の色は最終的に薄くなる。

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したがって、出生時や乳幼児期から見られる先天的な虹彩異色症は多くの場合、まったく無害な「気まぐれな発生」にすぎない。「遺伝的モザイク(一つの個体のなかで、遺伝的に異なる細胞が混在すること)」でも、同様の不規則な効果が生じることがある。

生まれつき眼の色が異なる人の多くは、健康で、通常どおり機能する視覚を持つ。ただし少数のケースでは、虹彩異色症がもっと大きな異常の兆候の一つである場合がある。神経堤細胞に影響を与える遺伝子疾患であるワールデンブルク症候群では、あざやかな青い眼や異なる色の眼のほか、部分的な白髪が生じることがあり、なかには聴覚を失う人もいる。

顔の片側をつかさどる神経が関係する先天性ホルネル症候群でも、片眼の虹彩の色が薄くなることがある。というのも、そうした神経が幼少期に眼の色素発生を促進していると見られるからだ。

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成長後に眼の色が変わる理由

虹彩異色症は、成人してから現れることもあり、その場合は話が違ってくる。眼の損傷、眼の内部での出血、なんらかの種類の慢性炎症、まれには腫瘍によって、片眼の虹彩の色が変わることがあるからだ。また、一部の緑内障の点眼薬を長く使っていると、虹彩の色が徐々に暗くなることが知られている。

そのため、眼科医は通常、成人で片眼の色が顕著に変わった場合は診察を受けるよう勧めている。変化そのものが危険であることはめったにないが、水面下で進行している何かの兆候かもしれないからだ。

ネコなどの動物に虹彩異色症が多い理由

虹彩異色症はヒトではまれだが、ほかの動物では比較的多く、「オッドアイ」と呼ばれる。白い猫、ハスキー犬、オーストラリアン・シェパード、一部の品種のウマでは、虹彩異色症がよく見られる。その理由は、それらの動物の多くが白い毛皮や白斑などの模様をつくる色素を薄くする遺伝子を持っているからだ。そうした遺伝子は、色素細胞が落ちつく場所や、発生段階で産生する色素の量を制限することで、そのような機能を持つ。

2014年に『G3(Genes, Genomes, Genetics)』で発表された研究では、ネコの白い毛皮と白斑の由来をたどると、どちらもKITという単一の遺伝子の変化に行きつくことがわかった。その効果が片眼にまで広がると、片方の眼が青くなる。

同じ発生上のつながりは、白猫に見られるよく知られたパターンの説明にもなる。青い眼の個体は耳が聞こえないことが多く、青い方の眼と同じ側の耳が聞こえないケースもある。内耳も、神経堤細胞に由来する細胞に頼っているため、この2つの形質が共に現れる場合があるのだ。

なお、ヒトにおいてとりわけよく知られている「虹彩異色症」の一例は、実のところ、まったく虹彩異色症ではない。ミュージシャンのデヴィッド・ボウイは、左右の眼の色が異なると言われることが多いが、ボウイの虹彩は左右とも青色だった。若いころに負傷したあと、片眼の瞳孔が恒久的に広がったままになったのだ。これは瞳孔不同と呼ばれる症状で、これが生じると眼の色が暗くなる。

左右の眼の色が異なるミュージシャンのデヴィッド・ボウイ(Lester Cohen/Getty Images)
左右の眼の色が異なるミュージシャンのデヴィッド・ボウイ(Lester Cohen/Getty Images)

左右の眼の色の違いは、実際の形質をめぐる何かしらの真実を映し出している。眼の色は、固定された単純な特徴のように見えるかもしれないが、長い発生プロセスの最終的な結果なのだ。私たちの体は細胞でできており、その細胞はちょうどよいタイミングで移動し、定着し、スイッチを入れることになっている。そして、時にはそうしたプロセスが無害ではあるものの、不均等に進むこともある。まれに生じる虹彩異色症は、その事実を視覚的に物語っている。

(forbes.com 原文)

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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