最高のパフォーマンスを発揮しているときには、脳内の自己監視を担う部位の活動が一時的に静まる。その対極にあるのが、誰もが知っている「プレッシャーで実力を発揮できない」状態だ。学術誌『Frontiers in Sports and Active Living』に2023年に掲載されたレビューにあるように、熟練した人が普段自動的に行っている動作を意識的に確認し始めると、パフォーマンスが低下することがある。スムーズにタイピングできる人が指をどこに置くかを考え始めると、たいていタイプ速度は落ち、タイプミスも増える。
この法則が「知性」を反映している理由
力を抜くことでIQが高くなるというのは表現として大げさだろう。その代わりにこの法則が反映しているのはメタ認知のスキルであり、これは自分の思考に気づき、それを管理する能力のことだ。
常に慎重で抑制の効いた状態を保ち続ける人は、徹底して物事に取り組むことはできるが、すでに難なくできるタスクであっても、スムーズに進めるのに苦労することが多い。一方、事前準備をせずに直感だけに頼る人には、依拠するものがほとんどない。長期的に見て優れた思考ができる人は、この2つの状態を行き来する傾向がある。新しいことやうまくいかないことがあるときはペースを落として注意深く検討し、順調に進んでいるときは自分の思考の邪魔をせず、流れに身を任せるのだ。
これは知的な人が時として誤解される理由でもある。難しい仕事をしながらリラックスしているように見える人は、決して不注意なわけではない。丁寧な学習はすでに済ませ、それを十分に信頼しているため、いちいち自分の判断を疑う必要がないのかもしれない。
法則の実践法
最も役立つ取り組みは、学習と実践を別々の活動として扱うことだ。練習中はペースを落として自分のミスを詳しく検討するといい。下書きを書いているときであれ、難しい会話をしているときであれ、実際に仕事に取り組んでいるときには、その作業に集中し、批評は後回しにするほうが多くの場合うまくいく。
また、自分が今どの段階にいるのかについて正直になることも大切だ。あるスキルがまだ自分のものになっていないように感じられるのなら、たいてい必要なのはもっと信頼することではなく、より集中した練習だ。十分に理解していることなのに何度も確認している自分に気づいたら、それは多くの場合、注意を向けることが解決策ではなく問題になっている兆候だ。
最後に、「リリース」の段階には邪魔されないまとまった時間が不可欠だ。頻繁に中断されると思考は再び監視モードへと引き戻されるため、最も重要な作業のためにまとまった時間を確保するといい。
私たちは通常、集中力とは最大限に高めるべきものだと考えている。だが、フローに関する研究が示唆しているのは、集中力は「適切なタイミングで活用すべきもの」として理解するほうが適切だということだ。有能な人は学習中は注意深く、集中して努力を重ねる。そしてその後は、それまでの努力を十分に信頼し、絶えず監視することなく流れに任せているのだ。


