サイエンス

2026.10.29 18:00

鳥たちはなぜ、コンクリートジャングルを器用に飛び回れるのか

写真家のラグヴァンシュ・チャヴァリは、都市を飛び交う鳥を撮影したシリーズ作品「Wings Over Concrete(コンクリート上の翼)」を発表している。それらの写真からは、鳥が都市環境を飛びながら瞬間的な判断を下していることが見えてくる。Wings Over Concrete © Raghuvamsh Chavali

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鳥はどうやって都市空間を読み取っているのか

手始めに、シリーズに幾度となく登場するムクドリを挙げよう。ムクドリの群れは、そろった動きで一斉に空を飛び回るが、それが可能な理由を説明することは不可能だ、と以前から考えられてきた。ところが、2008年に『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載された研究で、群れを3次元で再構成したところ、群れがいくら広がろうと、各ムクドリが注意を払うのは自分の近くを飛ぶ6羽か7羽だけであることが明らかになった。群れ全体の動きを追うムクドリは1羽もおらず、各自が自分の近くを飛ぶ仲間に合わせて動いているだけだったのだ。

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その後の研究では、近くを飛ぶ仲間同士が同じ動きをすることから、群れの端で始まった方向転換が瞬時に群れ全体へと波及していくことが示された。チャヴァリの言う「決断が群れ全体に伝わっていく」は、まさにこのことを指している。

カナダ、オンタリオ州にて。高層ビルの横で上昇するムクドリの群れ。その飛行ルートが重なり合って広がり、高密度な扇のような隊形を描き出す。 Wings Over Concrete © Raghuvamsh Chavali
カナダ、オンタリオ州にて。高層ビルの横で上昇するムクドリの群れ。その飛行ルートが重なり合って広がり、高密度な扇のような隊形を描き出す。 Wings Over Concrete © Raghuvamsh Chavali

鳥が、目の前の状況を人間よりずっと速く処理できることも、ひと役買っている。人間の目にはぼやけた塊にしか見えない事物であっても、多くの種は、視野でとらえた急激な変化を認識できる。こうした能力があるからこそ、鳥は近くを飛ぶ仲間の動きと、周辺の建物を同時に把握できるのだ。都市で人間が見る輪郭線は固定されていて動かない。しかし、空を飛ぶ鳥が読み取る景色は絶えず変化している。

チャヴァリによると、そう気づいたことで、鳥の撮影方法が変わったという。「鳥たちが美しい隊形をつくり出すのをただ待つことを止めた。代わりに、鳥と建築物が互いに反応し合っていると感じられる瞬間を待つようになった」

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チャヴァリは、自分は写真家、アーティストであって、鳥類学者ではないと言いながらも、長い時間をかけて鳥を観察した末に、生物学を的確に要約する一つの文章にたどり着いた──「建物は動かないが、鳥は動かなければならない」

カナダ、オンタリオ州にて。ダウンタウンの街路を飛ぶハトの群れ。その飛行ルートが重なり合って一体化し、ビルや標識のあいだを縫って進む、濃密な流動体へと姿を変える。 Wings Over Concrete © Raghuvamsh Chavali
カナダ、オンタリオ州にて。ダウンタウンの街路を飛ぶハトの群れ。その飛行ルートが重なり合って一体化し、ビルや標識のあいだを縫って進む、濃密な流動体へと姿を変える。 Wings Over Concrete © Raghuvamsh Chavali

建物は、周辺にある空気の流れを変えている。風は、高くそびえる壁にぶつかって上へと押し上げられる。とりわけカモメは、その上昇気流をうまく生かすことを学んだ。

2016年に『Philosophical Transactions of the Royal Society B』で発表された研究では、英ウェールズ南部の都市スウォンジーの海沿いに生息するカモメを追跡した。その結果、立ち並ぶビル沿いを飛ぶ時は、風の向きに応じて飛行ルートを調整し、エネルギーを節約していることがわかった。カモメは、海に面する切り立った崖沿いに飛ぶ時も、同じようにする。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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