政治

2026.11.02 16:00

米国経済を停滞させる「侮蔑の文化」の正体

stock.adobe.com

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

政治学者のネイサン・カルモーとリリアナ・メイソンは、相手を非人間化し、害が及ぶことを望む姿勢である「死を招くほどの激しい党派対立(lethal mass partisanship)」が、周縁から主流へと移ってきたことを記録している。2020年には、イーライ・フィンケル率いる15人の研究者が、米国人の相手政党への敵意が、自党への愛着を上回るようになったと『Science』で報告した。彼らはこれを「政治的セクト主義」と呼ぶ。アーサー・ブルックスは著書『Love Your Enemies(未邦訳)』で、この病に「侮蔑の文化(culture of contempt)」という名を与えた。相手のことを、単に「間違っている」と見るだけでなく「価値のない存在」と見なし、私たちの怒りから利益を得る「憤激の産業複合体(outrage industrial complex)」によって煽られる文化である。

advertisement

ここで重要なのは、この侮蔑の大部分が虚構の上に成り立っているという点だ。非営利組織のMore in Commonによる研究は、巨大な「認識のギャップ(perception gap)」を記録している。民主党員も共和党員も、相手側に実際のほぼ2倍の数の過激派がいると想像しているのだ。

妥協が破綻し続ける理由

さまざまな課題において現在、政策立案が行き詰まっている。それは、すぐに使える解決策がないからではなく、双方が互いに抱く侮蔑のためである。最近では、この侮蔑が党内の派閥間にも現れている。党の将来像について異なる考えを持つ人々を、裏切り者、あるいはそれ以下の存在と見なすケースがあまりにも多い。

筆者は、「血の大会」と呼ばれた1968年の民主党大会を経験している。同大会では、ベトナム戦争を巡る分裂が深刻化し、反戦デモ隊と警官隊が衝突するなどの政治的混乱が起きた。多くの意味で、今日の状況はそれより悪く感じられる。この侮蔑は、あらゆる問題で妥協を不可能にしている。

advertisement

侮蔑は今や、経済と市場にとってのリスクにもなっている。成長、インフレ、資本配分に実質的な影響を及ぼす問題で妥協を阻んでいるからだ。顕著な例の1つが、信託基金の支払不能が近づく社会保障制度に対処できない米国議会の失敗である。これは長期的な財政リスクを高め、米国債市場の見通しにも影響する。年間の連邦財政赤字がいまや2兆ドル(約316兆円)に近づいていることも同様だ。

移民政策を見ても同様だ。この問題が行き詰まっているのは、「国境開放」や「残酷さ」という非難が、執行と合法的な道筋をめぐる交渉に取って代わったためだ。トランスジェンダーの権利をめぐる議論も、双方が公平性や安全性に関する実質的な議論を避け、相手を「危険(略奪的)」あるいは「偏狭」と互いに決めつけ合うことで決裂してしまう。犯罪政策は「犯罪に甘い」と「警察国家」という戯画の間を揺れ動く。エネルギー政策では、「地球の破壊者」と「雇用の破壊者」が対立する。

次ページ > 世論調査が示す「米国人の大半が極端な立場を拒む」実態

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事