1つのカクテルで、複数種のヘビに対応
まずは、これらのナノボディが、インドのさまざまな地域のヘビ毒を認識できるかどうかを検証した。このカクテルは、インドコブラの5つの個体群、モノクルコブラの2つの個体群、キングコブラの2種の毒に結合した。地理的な差異が大きいにもかかわらず、同じ5つのナノボディで毒を認識できることが示された。
その後の実験で、毒をナノボディのカクテルと混合してからマウスに注入すると、処置を受けた個体はすべて、インドコブラ、モノクルコブラ、試験対象となったキングコブラ2種の毒すべてで生き延びた。対照的に、処置を受けなかった個体は短時間で命を落とした。
ヘビに咬まれた状況をより忠実に再現した実験では、まずマウスの皮下に毒を注射し、その5分後、ナノボディによる治療を行なった。ここでも、治療を受けたマウスはすべて、24時間の観察期間を生き延びた。
治療が遅れても防御が可能
実際にヘビに咬まれたとき、すぐに治療が開始されるわけではない。病院に搬送しなければ、抗毒素の投与を受けられないこともある。そのため、治療が遅れた場合を想定した実験も行われた。
ある実験では、毒に暴露されてから5分後、10分後、20分後に、ナノボディのカクテルを投与した。毒の注入から20分後に投与した場合でも、この治療法は完全な防御効果を維持した。ナノボディには、暴露前の予防だけでなく、体内に入り込んだ毒を無毒化する能力もあることが示されたのだ。
しかし、重要な落とし穴も見つかった。インドアマガサの毒には効果がないと判明したのだ。インドアマガサの毒には、5つのナノボディが標的としていなかった毒素が主成分として含まれているためだ。
より柔軟な応用が可能な抗毒素
この組換え型抗毒素は、特定の成分セットからつくられているため、新たなナノボディを追加することで、ほかのヘビの毒素を標的とすることも可能だ。今後の方向性としては、特定の地域に合わせた抗毒素、より広範な地域の主要な毒を網羅する抗毒素などが考えられる。また、ナノボディは細菌に産生させることもできるため、より安定性が高く、動物への依存度が低い製造が実現するかもしれない。
ナノボディが、マウスよりも大きな動物の体内でどのように振る舞うかを解明するにはさらなる研究が必要だが、この研究は、抗毒素製造の根本的に異なる手法を提示している。動物体内で多様な抗体混合物を産生させ、それが毒を無毒化してくれることを期待するのではなく、科学者が重要な毒素を特定し、それらの抗体を選別し、その成分を組み合わせて明確な治療法を構築できるようになるからだ。
それにより、将来の抗ヘビ毒血清を、より精密で適応性が高く、製造も容易な抗毒素で置き換えられる可能性がある。同時に、現在の抗ヘビ毒血清では治療が困難なヘビ咬傷にも対応できるようになる可能性がある。


