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2026.10.28 11:30

離職率83%からの再生、社員が情熱を取り戻した「売り上げを生まない1時間」とは

浦濱広太朗|プーラビダ 

DX化で生み出した「余白」の時間

そこで次に導入したのが、浦濱が講演を聞きにいって衝撃を受けた「人時生産性」という概念だ。

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「普通は会社の粗利益を増やすには、コストを削減しようと考えますよね。でも、人時生産性は、粗利を上げるためには働く人のやりがいや質を高めていくという考え方です。質を高めるためには労働時間を減らして、余白の時間をつくって情熱をもって仕事ができるようにするんです」

浦濱は、自治体の無料相談窓口「北九州市ロボット・DX推進センター」の協力で、Google WorkspaceやAIを活用したバックオフィスを構築。劇的な変化はまず時間に現れた。

「医療業界は国保連合会に毎月の売り上げを報告しなければいけません。これまでどんぶり勘定のような状態だったところに管理会計システムを導入し、1時間半かかっていた書類作成が3分で済むようになりました。さらに、月末は主治医への報告書を作成しないといけないのですが、バックオフィスができたことで7時間半かかっていた作業が2時間で終わり、定時に帰れるようになりました」

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稼働が増えた場合は、それによってどれだけの利益が出たかをすべて「見える化」した。例えば100万円の利益が出たら、「臨時手当」として分配するインセンティブ設計を取り入れた。

そして、看護師たちが真の意味で変わったのが3つ目の打ち手だった。業務時間内に「売り上げを生まない1時間」なるものを設定したのだ。「もともとは創業時から設けていた時間ですが、形骸化して申し送りの時間になっていました。これを業務時間内の勉強会に変えたのです」と、浦濱は言う。

例えば、歯磨きに2時間、手を洗うのに4時間、入浴には8時間もかかるような重度の強迫性障害の患者に対応するため、浦濱は東京の専門家をオンライン講師に招き「暴露療法」の研修を実施した。

手が汚れるのが不安でものに触ることができない患者に、「スマホを触る」といった比較的ストレスの少ない行動を促して、段階的に慣れさせていく。患者の入浴の際には、講師の指示通りに「ちゃんと洗えてますよ」「きれいになってますよ」と、看護師が声をかけながら洗っていく。すると、8時間かかっていた入浴が30分で済むようになった。

「看護師たちの表情が一変しました」。浦濱がそう語るとおり、これまでの看護師たちの悩みが、嘘のように解決していった。手応えは「大アリ」だった。精神疾患だけではない。寝たきりの人の褥瘡(じょくそう)や尿もれの予防など、現場で課題が出るたびに、浦濱がどこからともなく講師を呼んできて、看護師たちに解決法を伝授してもらった。

看護師たちはもともと人助けをしたくて、この職に就いた人たちだ。患者たちが喜ぶ姿を見た看護師たちは、自分自身が成長していることを実感し、情熱を取り戻していった。

「やる気スイッチ」は「目覚め」に変わった。

看護師たちは自主的に読書会を始めた。人間をもっと知りたいという探究心から、本の感想を言い合い、理解を深めていく。アプリを使って感謝の共有も始めた。不満と愚痴の温床だった職場が、同じ会社とは思えないほど劇的に変わった。

人は誰しも「昨日の自分」より成長したいと願っている。「売り上げを生まない1時間」は、まさにその人間成長の機会だった。取り組みは高く評価され、浦濱のもとには医療界にとどまらず、百貨店や一般企業からも講演依頼が殺到している。


浦濱広太朗◎1985年生まれ、北九州市出身。臨床経験20年の看護師、プーラビダ代表。DX Selection 2026グランプリ受賞の知見を生かし、他機関へのローカルAI導入やDX移行支援を精力的に行う。自社で実証した現場発のITシステムや経営効率化ノウハウを提供し、アナログな医療・介護現場が自立してデジタルを活用できる未来を支える。

文=藤吉雅春 写真=平岩 享

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