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2026.10.28 11:30

離職率83%からの再生、社員が情熱を取り戻した「売り上げを生まない1時間」とは

浦濱広太朗|プーラビダ 

浦濱広太朗|プーラビダ 

Forbes JAPAN 2026年12月号の第2特集は、規模は小さくても高い付加価値を誇る中小企業を表彰する「スモール・ジャイアンツアワード」。今回で第10回の節目を迎えた。「グローバル市場の開拓」「地域への貢献」「稼ぎ続ける力」を基準に選ばれてきた受賞企業は、これまで日本経済再生の担い手として語られることが多かった。だが、今回の受賞企業7社が示したのは、それにとどまらない可能性だ。インフラの老朽化、環境問題、人口減少……。社会が抱える難題を解く「切り札」としての力である。中小企業ならではの人的資本経営をたたえる「LOVED COMPANY賞」の2社とあわせ、未来を変える「小さな大企業」の挑戦を追った。


LOVED COMPANY賞 プーラビダ(福岡県北九州市)

職場には陰口と不満が蔓延し、仕事に出かけた社員は車の中でYouTubeを見て時間を潰す。会社の信用はガタ落ちで、仕事は減る一方。その結果、離職率は83.3%に──。

「実は、社長の私自身が、『こんな会社では働きたくない』と思うようになり、地元のマクドナルドの求人に応募しようと、履歴書を書き始めました」。北九州市の訪問看護ステーション「プーラビダ」社長の浦濱広太朗はそう振り返る。従業員数40人の会社で、離職者が相次ぐのは異常事態だ。だが、履歴書を書いている途中、我に返った。「自分は何をやっているんだ」と。

それから3年。離職率は1.5%に激減。さらに営業利益率は業界平均の2倍を超える10.4%を達成した。社員の「やる気スイッチ」を入れたのは、誰にでもできる意外な取り組みだった。

訪問看護業界は2000年の規制緩和以降、医療法人以外の民間事業者も参入できるようになった。その後も超高齢社会の進展により、政府は「在宅医療」を推進。訪問看護ステーションは2000年からの26年間で4倍を超え、約1万9,000カ所に急増している。

一方で、淘汰も始まっている。公的価格(介護報酬・診療報酬)で基本料金が決まっており、サービス価格を自由に設定するのは難しい。また、ケアマネジャーや主治医からの紹介によって利用者を獲得するため、広告を出したら利用者が増えるというわけではない。しかも労働集約型ゆえに、離職率が高いと事業が成り立たない。

13年、当時28歳だった看護師の浦濱は、故郷の北九州市でプーラビダを創業した。社名は「100%の生き方」を意味するスペイン語に由来する。「病院ではなく自宅で、治療を受けながらでも100%自分の生きたいように生きることを支えたい」という理想を掲げた。

3年ほどかけて経営を軌道に乗せて、インドネシアでの新規事業を準備し始めた。技能実習生に日本語を教える事業だ。だが、1年間毎月インドネシアに通い続けるうちに、本業は疎かになっていった。

「訪問看護に行ったまま事務所に戻ってこない看護師が増えました。本来は患者さんの改善された点などを共有するのが良い職場なのですが、事務所に戻ってきても愚痴や噂話ばかり。経営者である私が不在ということもあり、ケアマネジャーからの信頼を失い、仕事の依頼がなくなっていったのです」

藁にもすがる思いの浦濱は、グロービス経営大学院などで学び直しを決意。講演会や勉強会にも出向くようになった。そんな浦濱が最初に取り組んだのが、グロービスで学んだジョン・コッターの「変革の8段階のプロセス」の最初のステップ、「危機意識の共有」だった。

「実はこんなに赤字なんです」。浦濱は看護師たちに会社の数字をすべて見せた。すると、不満と反発の声が噴き出し、「こんな会社、辞めます」と退職者が相次いだ。

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文=藤吉雅春 写真=平岩 享

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