ITのプロも例外ではない──使い慣れたログイン方法に引き寄せられる
パスワードに頼り続ける理由の1つは、なじみのある方法に引き寄せられるという人間の性質にある。ほとんどの利用者にとって、パスワードは単純に、パスキーよりも慣れ親しんだものなのだ。それはセキュリティの専門家も変わらない。
人間とマシンの両方のアイデンティティを管理するプラットフォームを提供するOktaで、上級副社長と副最高セキュリティ責任者(副CSO)を務めるシャーロット・ワイリーは、メールでの取材にこう答えた。「理屈の上では、セキュリティやITの専門家は、誰よりもITを使いこなす人たちです。ところが日々の習慣を見ると、半数近くがいまだに、基本的なユーザー名とパスワードでログインしています。では、なぜこれほど大きな食い違いが生じているのでしょうか。答えは、人間の性質と、現代のAIがもたらした現実にあります」。
研修や従来型MFAに見切りをつけ、フィッシング対策をどこで強制するか
「問題は、AIによって『ひと目でフィッシングとわかるもの』が完全に姿を消したことです。もはや『人間のファイアウォール』には頼れません。生成AIは今や、完璧な文章で書かれ、相手1人ひとりに合わせて作り込まれたソーシャル・エンジニアリング攻撃を、大量に生み出しているからです。そのため、人間が目で見て見抜くのは、とても難しくなっています」とワイリーは言う。
ワイリーは、業界がこの普及のギャップ、つまりパスキーが知られているのに使われていないという状態を解消したいなら、研修で切り抜けようとするのをやめ、人為的なミスの入り込む余地を残す従来型のMFAに頼るのもやめなければならないと主張する。代わりに彼女が勧めるのは、偽のサイトに誘導されても破られない、フィッシング耐性のある認証を求める方針を、インフラのレベルで強制することだ。


