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2026.10.19 08:49

AIに任せられること、人間にしかできないこと 現場リーダーが語るAI活用の勘所

Adobe Stock

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あらゆる経営幹部が、似たような問いを投げかけられている。「効率性を高めるために、わが社はどのようにAIを活用しているか」と。

キャリアの大半を複雑な業務やファシリティ(施設管理)組織の牽引に費やしてきた筆者は、リーダーは第2の問いを投げかけるべきだと考える。「効率性によって人間の判断力を置き換えてはならない領域はどこか」と。

筆者は、AIが業務にもたらす可能性に期待を寄せている。現場のチームは、作業指示、ビル管理システム、人員配置、購買、点検、光熱費、顧客からの要望、資産履歴、予算などを通じて膨大な情報を生成している。AIは、従来は別々のシステムに分断されていた情報を連結させ、リーダーが実際に活用できる形へと変える機会を与えてくれる。

しかし、キャリアを通じて筆者が学んできたのは、業務が報告書に表れる通りに進むことはほとんどないという事実だ。

ダッシュボードや作業指示書、パフォーマンス指標を何時間眺めていても、毎日現場で作業にあたる従業員とともに現場を歩くことのほうが、はるかに多くの気づきを得られる。技術者はシステムが問題を認識する前に、モーターの異常音を聞き分けるかもしれない。清掃員は、それがトレンドとなるほど多くの作業指示が発生する前に、深刻化しつつある問題に気づくかもしれない。敷地管理の作業員は、資金計画レポートに掲載されるずっと前に、発生しつつある排水問題を察知するかもしれない。

こうした経験が、筆者のAIに対する考え方を形成している。AIは業務リーダーに「もう1組の目」を与えるべきだが、すでに現場にある目を置き換えるべきではない。

データに文脈を与える

筆者は、限られた人員、時間、資金を巡って何千もの作業指示やサービスリクエスト、保守作業が競合する現場を管理してきた。業務上のリーダーシップにおいて最も困難なことの1つは、何を最優先で対応すべきかを判断することだ。ここでAIは極めて価値の高い存在になり得る。

一見無関係に見えるサービス呼び出しが複数発生しているHVAC(空調)設備を想像してみてほしい。個々で見れば、どれも重要には見えないかもしれない。しかしAIは、それらの作業指示を設備の耐用年数、稼働時間、エネルギー消費量、修理費用、過去のパフォーマンスと関連付け、その資産が故障に近づいていることを示唆するパターンを特定できる。

これは価値あるインテリジェンス(情報)だ。しかし、業務上の重大な決定を下す前に、筆者は依然として経験豊富な技術者をその設備の前に立たせたいと考える。

その技術者は、その設備が重要なスペースをカバーしていることを知っているかもしれない。交換部品の入手が困難になりつつあることを把握しているかもしれない。完全に文書化されなかった過去の修理を覚えているかもしれない。あるいは、比較的軽微な対処を行えば、現実的にあと5年は稼働させられることを知っているかもしれない。

データは物語の一部を提供するにすぎない。人だけが文脈を与えてくれるのだ。

これはファシリティやインフラにおいて特に重要である。運用上の判断は即時の結果をもたらし得るからだ。配電、防火、HVAC、エレベーター、非常用電源、入退室管理、その他の重要システムは、アルゴリズムが統計的に適切と判断したものだけで管理できるものではない。

AIは異常な電力消費にフラグを立てるかもしれないが、電気技師がそれを調査する必要がある。予兆分析は異常振動を特定するかもしれないが、技術者がその原因を特定する必要がある。AIは数カ月分の保守記録から火災報知器の繰り返される問題を特定するかもしれないが、人命に関わる安全上の懸念があるかどうか、そしてどのような是正措置が適切かを判断するのは、やはり有資格のプロフェッショナルでなければならない。

組織の経験知を維持する

筆者の経験上、業務において最も重要な情報の一部は、データベースに登録されることすら一切ない。

筆者は、何十年も同じ施設を維持管理してきた従業員たちとともに働いてきた。彼らはどのバルブを閉めれば建物の特定区画を遮断できるかを知っている。最新の図面に記載されなかった数年前の修理についても知っている。気温の変化に応じてどの設備に特別な注意が必要か、悪天候時にどの場所でトラブルが発生しやすいかも熟知している。

そうした従業員が退職するとき、組織はたった半日で何十年分もの経験知を失ってしまう可能性がある。

実のところ、これこそがAIが最も価値ある業務ツールになり得ると筆者が考える領域だ。

経験豊富な従業員を「テクノロジーで置き換えられる知識」と見なすのではなく、彼らの知見を記録・集約するためにAIを活用することができる。保守履歴、トラブルシューティングの手順、手書きメモのある図面、設備の記録、そして熟練者との対話は、整理され検索可能な組織のナレッジとなり得るのだ。

AIは経験を保存するために役立つべきであり、経験はもはや不要だと私たちに思わせるものであってはならない。

生産性を高める

同じ哲学が労働生産性にも当てはまる。

筆者はこれまでのキャリアの中で、スーパーバイザーやマネージャーがレポート作成、情報検索、作業指示の確認、スケジュール作成、事務作業にどれほど多くの時間を費やしているかを見てきた。AIによってその時間の一部を取り戻せるのであれば、そこには莫大な価値がある。

しかし、筆者はその成功を削減できた人員の数で推し量るつもりはない。むしろこう問うべきだ。「どれほどの業務余力を創出できたか」と。

もしAIがスーパーバイザーに毎週5時間の余力を与えてくれるなら、その時間を現場へと再投資してほしい。建物を歩いて回る。従業員と対話する。完了した作業を検査する。顧客と会う。安全状況を確認する。新しいスーパーバイザーを指導する。作業指示を出し続けている設備を直接確認する。

テクノロジーは、リーダーが現場に身を置く機会を増やすためのものであるべきであり、現場から切り離される理由を増やすためのものではない。デスクに座ったまま業務のすべてを管理することはできない。ダッシュボードは重要だ。データも重要だ。作業指示システムも重要だ。そしてAIの重要性も高まっていくだろう。しかしそれと同様に、現場を歩き、作業にあたる人物に「私が見落としていることで、何か気づいたことはあるか」と尋ねることも重要なのだ。

強みを実用的な機能に合わせる

AIで成功を収める組織とは、必ずしも最も自動化を進めた組織ではない。テクノロジーが極めて得意とすることと、依然として人間の方が長けていることを理解している組織なのだ。

何千もの作業指示の分析はAIに任せればよい。パターンの特定、故障の予測、組織のナレッジの整理、事務作業の削減はAIにやらせればよい。そして手に入れた情報を現場に持ち込み、業務を熟知している人々と一緒に確認・検証するのだ。

(forbes.com 原文)

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