広告の相手は子どもか保護者か──規制と資金不足の難題
トッテンは、ポッドキャストの人気が高まり始めたころから広告が課題になっていると、改めて説明する。「企業は、子ども向けの番組で誰に広告を届けるべきか分からない。子どもなのか、一緒に聴いている保護者なのか。保護者が興味を持つ商品はあるのか。幼い子どもも聴く番組では、どんな商品を宣伝してはいけないのか。以前より改善はしている」。エジソン・リサーチとKids Listenの調査からは、親子で一緒に番組を聴く人が多く、1回のダウンロードで大人と子どもの両方に届くことが分かる。Star GlowやSuperAwesomeといった広告販売会社は、子ども向け商品を扱う企業にスポンサー契約を提案し、成果を上げている。ただし、多くの番組は実際の聴取者層に合わない商品の広告を売ろうとして苦戦しているという。
カプランも「宣伝と配信にはお金と時間がかかる。音声番組の制作者の多くは、その両方が不足している。広告主を呼び込むには一定の聴取規模が必要だが、規模を育てるための宣伝にも資金が必要になる。鶏が先か卵が先かという問題だ」と語る。
クレンショーによると、子ども向け番組に広告を出すのは、家族向けブランド、玩具メーカー、教育サービス、子ども向けメディア企業が中心だ。大人向け番組でよく見られるマットレスや食材宅配キットなどの消費者直販企業とは顔触れが異なる。子ども向けの広告には厳しい規制があり、親子で一緒に聴く保護者も重要な広告対象となる。そのため、広告枠の販売は専門ネットワークや大手メディア企業が担うことが多い。
音声配信会社と専門企業がスポンサーを呼び込む仕組み
SuperAwesomeはアルファ世代やZ世代などの若年層へ安全に広告などを届ける技術・サービスを提供する企業だ。音声を中心に事業を展開する子ども向けメディア企業Tinkercastと、独占広告提携を結んだ。Tinkercastは、世界的に人気のある家族向け科学番組『Wow in the World』を制作している。
SuperAwesomeはTinkercastの広告枠を企業へ直接販売する独占パートナーとなる。『Wow in the World』を親子で聴く数百万世帯と、Tinkercastが手掛ける受賞歴のある他の番組へ、広告主が安全性に配慮された環境で広告を届けられるようにする。
Lemonadaは家族向け2ブランドの配信を引き受けた
ポッドキャスト配信企業Lemonada Mediaも2025年11月、家族向けの2ブランドについて広告販売と配信を引き受け、初めて子ども向け市場へ参入した。契約先の『Story Pirates』は累計ダウンロード数が1億回を超え、複数の賞を受けたコメディー番組だ。子どもから寄せられた物語を寸劇や歌に仕立て、ジュリー・アンドリュース、リン=マニュエル・ミランダ、ジョン・レジェンド、クリステン・ベルなどの著名人をゲストに迎えることも多い。
2件目の契約先は『Brains On!』を中心とするBrains On Universeだ。科学を扱う代表番組に加え、討論番組『Smash Boom Best』、歴史をテーマにした『Forever Ago』、科学の豆知識を紹介する『Moment of Um』を展開する。モリー・ブルーム、マーク・サンチェス、トッテンが2012年に始めて以来、4番組を合わせた累計ダウンロード数は1億3000万回を超えている。『Story Pirates』とBrains On Universeはいずれも多くの聴取者を抱える。エジソン・リサーチが2025年に公表したランキングでは、12歳未満の子どもが聴く代表的なポッドキャストに両ブランドが入った。
司会者の読み上げ広告で、単価と広告枠販売率を高める
子ども向け番組の収益化は容易ではない。それでもLemonada Mediaの共同創業者ジェシカ・コルドバ・クレイマーは、事業拡大に自信を示す。重視するのは、番組の内容に合った広告を流すことだ。「事前に録音して自動配信する広告ではなく、番組に合う商品について司会者自身が読み上げる広告を中心にしている。そのため広告枠が売れる割合と、広告1000回当たりの単価であるCPMは、業界全体と比べて高い水準にある」と発表資料で説明した。
コルドバ・クレイマーは、提携した2ブランドについて「親子が一緒に聴くことを重視し、子どもと保護者の両方が楽しめる内容を作っている」と語る。Lemonada Mediaは以前から、親子を含む聴取者層に番組を届けてきた。
子ども向け番組での成功は、目隠しで砂金を採るようなもの
有名人でない制作者がポッドキャストで稼ぐのは、砂金を採るようなものだ。大金を手にできるのはごく少数で、大半は苦労を重ねても報われない。子ども向け番組で稼ぐのは、目隠しをして砂金を採るようなものだ。成功する見込みはさらに小さい。それでも、子どもを楽しませ、学びにつなげたいという思いで番組制作に力を注ぐ人がいる。トッテン、ブルーム、カプラン、ガイ・ラズも、子ども向け音声番組を支える制作者だ。


