同じ現象のやや穏やかな例は、マクドナルドとメキシコ料理レストランチェーン「チポトレ・メキシカン・グリル(チポトレ)」に見ることができる。マクドナルドは疑いなく、これまでに創られた中で最も偉大なレストランビジネスの1つだ。グローバルなブランド、何千もの店舗、莫大な購買力、そして極めて安定した利益を生み出すフランチャイズモデルを有している。同社の株価は現在、予想PER約19倍で取引されている。一方、チポトレは28倍近くで取引されている。
チポトレにはマクドナルドの規模に匹敵するものは何もない。同社にあるのは、「より大きな成長の余地がある」と捉えられていることだ。投資家は、事業が本当に成熟し始めるまでに、何千もの店舗の追加出店や国際市場へのさらなる拡大、そして何年もの成長を描くことができる。マクドナルドは確実性が、チポトレは可能性が評価されているのだ。
もちろん、その可能性は永遠ではない。投資家の同社の成長への熱が冷めたことで、チポトレの倍率は数年前の水準からすでに大幅に低下している。同社が突然悲惨な企業になったわけではない。まだ実現していない未来に対する人々の意欲を、少しだけ失っただけに過ぎない。高い株価収益倍率は、企業が一度獲得すれば保持し続けられるトロフィーではないことがわかる。人々がどれほどの未来を信じられるかについて考えを変えるにつれて、倍率は変動するのだ。そして、自動車やハンバーガーよりもさらに驚くべき例が存在する。
スペースXの狂気
スペースXの企業価値は現在、2兆ドル(約316兆円)規模に達している。しかし、利益が存在しないためPERを計算することすらできない。2025年、同社は約187億ドル(約2兆9600億円)の売上高を上げたものの、最終的には赤字だった。投資家は利益などお構いなしに、実質的に売上高の100倍以上の評価を同社に与えているのだ。
それはある意味、常軌を逸していると言える。あるいは、きわめて未来を見据えたものだとも言える。なにしろ、スペースXが今日生み出している利益に対して2兆ドルを支払っている者など1人もいないのだから。投資家は、その会社が将来どのようになり得るかに対して金を払っている。彼らはスターリンクが世界中に通信網を提供する姿を想像できる。スターシップが宇宙でまったく新しいビジネスを切り拓く姿を目に浮かべることができる。防衛、通信、インフラ、そしてまだ実質的に存在すらしていないその他の市場にも、様々な可能性が秘められているのだ。


