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2026.10.18 08:04

AIの世界では「10億ドル(約1580億円)」が新たな「1セント」だ

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先日、Yコンビネーター(Y Combinator)のデモデイで、シリコンバレーの別の投資家と、シード資金を調達したばかりの初期段階のスタートアップについて話していた。言うまでもなく、それは人工知能(AI)企業だった。その資金調達ラウンドについて議論している最中、筆者は思わず、そのスタートアップの企業価値が「数十億ドル」だと口にしてしまった。本当は「数百万ドル」と言うつもりだったので、すぐに言い間違いを訂正した。しかし心に残ったのは、単に言い間違えたことではなく、「ビリオン(10億)」という言葉が不意に口から飛び出したという事実だった。そして、AIブームの過程のどこかで、「ビリオン」という言葉が筆者の直感的な辞書に入り込み、頭の中に定着していたことに気づいた。我々はAI企業の資金調達ラウンドでこの言葉をあまりにも頻繁に耳にするため、もはや驚くこともなくなっている。

10億ドル(約1580億円)は今もなお巨額の資金である。だが心理的には、私たちの測定単位は直感的に変化してきた。10年前、評価額10億ドル(約1580億円)に到達することは極めてまれな偉業であり、シリコンバレーはそのために「ユニコーン」という特別な言葉を生み出した。今日では、一部のAI企業にとって、10億ドル(約1580億円)の評価額は出発点にすぎない。

評判への賭け

一部の企業は、スタートアップに伝統的に求められてきたマイルストーンを達成する前に、巨額の評価額を得ている。中には小規模なチームで、プロダクトすらまだ市場に出していない企業もある。収益など言うまでもない。その代わりに、彼らが持っているのはAI分野におけるチームのブランドと経歴だ。創業者は過去にAI企業を成功させた経験があるかもしれない。あるいは、一流大学の教授であったり、最先端のAI研究所で長年を過ごした人物であったりする。つまり、少数の創業者にとって、評判そのものが並外れて価値のある資産となっているのだ。画期的なAIモデル、推論アーキテクチャ、チップ、あるいはエージェントを構築できると目される研究者がチームにいれば、投資家は、その企業がビジネスモデルの片鱗を示す前に、相当な価値を付与しようとするかもしれない。そうしたケースでは、投資家は実質的に、商業的な実証の前に人的資本を引き受けていることになる。

資金調達の順序が逆転

AI以前の時代における従来のスタートアップの道筋は、高い評価額に到達する前に、まずプロダクトと顧客があるという順序だった。だがAI分野の一部では、いまや大きな評価額から始まり、その後にプロダクトと、そして(願わくは)売上が続くという順序になっている。ここで「願わくは」という言葉を加えることには不安を覚える。なぜなら、高い評価額を持つすべてのスタートアップが、その高い評価額を正当化し維持するために必要な売上水準に間に合って到達できるとは限らないからだ。

それは必ずしも、投資家が非合理になったことを意味しない。無限ともいえるAI市場規模と、希少な卓越した技術人材を踏まえれば、上振れ余地があまりに大きくなっており、従来型の証明を待てば投資が遅すぎることになると彼らが考えている、ということだ。したがって、そのアプローチには論理がある。

高い評価額は正当化され得る

シリコンバレーは無法地帯の西部開拓時代にある、と人々は言う。だが、こうした数字の背後にある投資家の正当化の論理を見ることは重要である。

第一に、前述の通り、想定される市場は巨大だ。投資家はAIを単なる別のソフトウェアカテゴリーとは見ていない。ソフトウェアエンジニアリング、金融サービス、採用、医療、教育、広告、製造、住宅ローン、ロボティクスなど、AIが届き得るあらゆる分野で労働を置き換え得る技術として見る傾向を強めている。これにより、ベンチャー支援企業にとっての対応可能市場は桁違いに拡大する。

第二に、一部のAI企業は、過去のソフトウェア世代ではほとんど見られなかったスピードでスケールしている。ある企業がほぼ無収入の状態から、驚くほど短期間で数千万ドルの売上に達し得ると投資家が本気で信じているなら、従来の評価額算定の枠組みは適用できない。

第三に、AIの一部領域は極めて資本集約的である。モデル、半導体システム、ロボティクスプラットフォーム、あるいは推論インフラの構築には、膨大な計算資源(コンピュート)とエネルギーが必要になることがある。チップを開発する企業にとっては、ファブ(半導体製造工場)の生産能力を確保するだけで数億ドルかかる場合もある。

最後に、ベンチャー投資は常にパワーロー(べき乗法則)に支配されてきた。投資家は理想的にはすべての企業に成功してほしいと考えるが、少数の企業が突出したリターンを生み出し得ることを知っている。将来の評価額が1000億ドル(約15兆8000億円)に達し得るなら、早期のポジションに10億ドル(約1580億円)の評価額を支払うことは正当化される。もちろん問題は、最終的に並外れた成果となる企業は少数に限られるという点だが、ファンドレベルで見れば、それで問題ないのかもしれない。

時が答えを示す

最終的には、すべての評価額は実際の事業指標によって正当化されなければならない。AI市場は、かつては不可能に見えた高い数字を正当化するだけの経済価値を生み出すかもしれない。だがAIは、あらゆる企業に付けられたあらゆる数字を正当化するとは限らない。答えは時が示すだろう。それまでは、シリコンバレーは数十億の言語を話し続ける。AIの時代には、10億が1セントのように聞こえ始めているからだ。

(forbes.com 原文)

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