「作り話」に惑わされなかったCIA長官
一方、失われた帝国を再興してロシアが米国に比肩する軍事力を誇る世界の超大国として君臨していた時代の栄光を取り戻そうとするプーチンの作り話に、微塵も惑わされなかった傑出した人物もトランプ政権には存在する。米中央情報局(CIA)のジョン・ラトクリフ長官は7月に開催されたペンシルベニア国防イノベーションサミットで、ウクライナの抵抗勢力が1年間にわたりロシア軍の前進を実質的に食い止めることに成功したと語った。
ユーチューブでライブ配信された動画の中でラトクリフは「現在、ロシアはウクライナの国土の20%を占領している」としたうえで「18カ月前に私がCIA長官に就任した際、ロシアはウクライナの19%を占領していた」と主張。「ウクライナが新興技術、具体的にはドローン戦や非対称戦を巧みに活用したことで、ロシア軍の進軍のペースは止まっている」「これは戦力を均等化する極めて有効な手段だ」と述べた。
ウクライナでロボット兵士の開発が今まさに飛躍的な進歩を遂げているのは、驚くべきことだとラトクリフは続けた。「AI(人工知能)を搭載したロボットやドローンが戦場に与える影響は、極めて大きい」「だからこそ、この紛争は4年半に及んでいるのだ。そしてここから得られる教訓は、技術を使いこなすこと、とりわけこれらの新興テクノロジーを習得することは、軍事力と全く同等に重要だということだ」
「これこそ戦力的に劣るウクライナが、(侵攻から)4年半が経過した今もロシアの優勢な戦力を食い止められている理由だ」とラトクリフは主張。「われわれの情報は、公開情報に基づく一部の報告と一致している。現在、ウクライナの戦場に送り込まれたロシア軍の新兵の平均生存時間は20~30分と推定されている」「20~30分だ。それは、AI搭載ドローンがそこまで専門化され、低コストの殺戮マシンとなったからだ」と語った。
ラトクリフは8月末に極秘でモスクワを電撃訪問したが、その任務の詳細はほとんど公表されていない。法学博士号を持ち、CIAを率いるラトクリフは、対峙するウクライナ、ロシア両軍部隊の正確な位置と侵攻開始以降に両軍が獲得・喪失した領土の詳細を記したウクライナの高精度地図や、ロシアとウクライナ全土で発射されたドローンやミサイルによる全攻撃の高解像度衛星画像を握っている可能性が高い。
だが、仮にこのときラトクリフが長く膠着状態にある戦線をロシア側に突きつけて和平を迫ったのだとしても、ウクライナに対するロシアのミサイル攻撃が緩和されることはなかった。むしろ激化した。


