向上するウクライナの長距離攻撃能力、KGBの心理戦術で対抗するプーチン
紛争の最前線を定期的に訪問し、ウクライナの抵抗を支える英雄たちと言葉を交わすゼレンスキーと異なり、プーチンはウクライナ国内の占領地に足を踏み入れることはほとんどなく、むしろ複雑に入り組んだ広大な地下の隠れ家に引きこもっているとディキンソンは言う。
「ウクライナのドローンやミサイル攻撃が主な原因で、プーチンが地下壕に退避する回数は増えている」とディキンソンは説明した。ウクライナが爆弾を搭載したドローンや新開発のミサイルによるロシア本土への空爆を強化する中、プーチンは地下シェルターを転々としているようだという。
ウクライナはロケット砲やドローンの射程距離と火力を飛躍的に向上させており、プーチンはゼレンスキーがロシア国内のより奥深くまで攻撃できる能力を有していることを知っている。そのためプーチンは戦慄し、被害妄想に陥りつつあるとディキンソンはみている。
それだけでなく「プーチンは、ウクライナの長距離攻撃能力の向上がロシア国内の安定と経済に重大な脅威となることを十分に認識している」とディキンソンは続けた。「こうした攻撃はロシア国民に戦争を身近に実感させている。したがって、プーチンにとっては、ウクライナの戦場での勝利や前進を絶えず語ることで国内の聴衆を安心させることが極めて重要なのだ」
かつてソビエト連邦国家保安委員会(KGB)で「国家の敵」や外国の諜報員と真っ向対決する「期待の星」として鍛えられたプーチンは、KGBが開発した心理戦術を一部活用して自らの敵を打ち負かそうとしている。
「ウクライナを支援する西側同盟国の士気を下げ、さらなる援助を阻止するには、ロシアの軍事的成果を誇張する必要があるとプーチンは感じている」とディキンソンは説明。より広い視点で捉えるならば、プーチンは「2022年以降のロシア軍の戦績が期待を大きく下回っていることを認識しており、架空の戦いの勝利を通じて『強さ』を演出する必要性を感じている」のだと指摘する。
クレムリンの最高司令官が空想上の勝利を繰り返し演じることの最大の標的の1人が、ドナルド・トランプ米大統領だ。さらに、プーチンを説得して和平交渉に引き込む任務を任された、外交や防衛においては素人の米不動産王2人(編集部注:対露交渉を担うスティーブ・ウィトコフ中東担当特使とトランプの娘婿ジャレッド・クシュナー)も標的だという。


