ロシア軍の最高司令官ウラジーミル・プーチン大統領は、迷路のように入り組んだ地下壕の中から、ウクライナ各地におけるロシアの軍事的勝利について延々と語り続けている。ウクライナの要衝は押し寄せるロシア軍の手によって次々と陥落しているというのだ。
同じように地下シェルターに閉じこもり、あるいはロシアの強制収容所に囚われていて、プーチンの厳重な管理下にあるプロパガンダ媒体を通じてしか情報を得られない人々は、もしかするとこうした「征服物語」を信じるのかもしれない。
しかし、これらの「勝利」の多くは虚構であり、プーチンが絶えず構築し続ける精巧な「代替現実」の一部にすぎない。その目的は、ロシア国民1億4000万人の信念や反応を形づくることだけではないと、ロシアのウクライナ侵攻に詳しい西側の専門家は指摘する。もう一つの目的は、欧州型の民主主義がウクライナで勝ち残るか、それともロシアの軍事独裁体制によって粉砕されてしまうのかを決定づけるこの戦争において、モスクワから数千キロ離れた場所にいる少数の聴衆、すなわち米ホワイトハウスにいるエリート層の意識を操作することだ。
国際的な影響力を持つ米シンクタンク、アトランティック・カウンシルの英国人専門家ピーター・ディキンソンは、ウクライナ北東部の要衝クピャンスクをロシア軍の装甲師団が制圧したとプーチンが自慢した事例を挙げた。
ロシアの戦果に世界が注目する中、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領はクピャンスク入りし、平穏な市街地を視察する様子を自ら撮影して配信。同市が制圧されたというのはロシア側の捏造だと否定した。
「今日、私はクピャンスク方面にいる。わが軍の兵士たちと共にだ」とゼレンスキーはユーチューブで公開した動画で語っている。「部隊を訪問し、彼らを称えた。各部隊、ここで戦い、占領者を撃退しているすべての人々に感謝している」
「いまウクライナが外交で成果を得るためには、前線で成果を上げることが不可欠だ」とゼレンスキーは続け、こう付け加えた。「国内でのわれわれの強固な立場はすべて、戦争終結に向けた交渉における強い立場につながっている」
これと似た展開がウクライナでは繰り返されている。プーチンが新たな軍事的成果を主張するや、疲弊しつつも活気あるウクライナの民主主義体制を率いる指導者が、いまだ制圧されていない都市の中から自ら撮影した映像とともに状況を報告するのである。



