AIは顧客が対価を払う対象を変えている
AIエージェントが知識労働の相当部分を遂行できるようになれば、多くのビジネスの経済構造が変化し始める。そしてそれこそが重要な点なのだ。顧客は作業時間、消費されたソフトウェアのライセンス数(シート数)、あるいは管理された複雑さに対して対価を支払うことに乗り気でなくなるかもしれない。顧客はますます成果を求めるようになるだろう。この変化はリーダーたちに対し、テクノロジースタックだけでなく、価格設定、組織構造、ワークフロー、人材モデル、さらには差別化された価値を生み出すうえで人間が果たす役割の再考を迫ることになる。
また、グレイの主張には重要な制約条件が含まれている。知能は潤沢になるかもしれないが、物理的な世界は依然として頑ななまでに有限である。ブラックストーンは、半導体チップ、発電、データセンター、許認可、資本、そして地域社会の合意形成におけるボトルネックを指摘している。今日注文したタービンが届くのは2030年や2031年になる可能性があり、ギガワット規模のAIインフラプロジェクトを支援するために必要な資本は数百億ドル(約3兆1600億〜7兆9000億円)に達することもある。
同様のダイナミクスは企業内部にも存在する。多くの場合、制限要因となるのは技術の能力ではなく、それに合わせて変化する組織の能力である。レガシーなマインドセット、ワークフロー、断片化したデータ、時代遅れのインセンティブ、部門のサイロ化、そして深く根付いた思い込みや信念は、制約された送電網の組織版となり得るのだ。
すべての経営陣が問うべき質問
常に人気を集める「AIはバブルなのか」という問いは、正直なところ経営陣が扱うには矮小すぎる。
失敗に終わる投資、膨張した評価額、そしてこのサイクルの波に乗り遅れる企業が存在することは疑いようがない。グレイ自身も、サイバーセキュリティ、地政学的リスク、過度な評価額、供給の制約を重要な懸念事項として挙げている。過去の産業革命も、倒産や混乱、非合理的な熱狂の時期を伴いながら、莫大な価値を生み出してきたのだ。
しかし、リーダーは備えをするために、次の30年の正確な姿を予測する必要はない。現在の企業を漸進的に改善するためにAIを使うのか、それともこの瞬間を利用して企業がどのような存在になり得るかを再考するのかを決断しなければならないのだ。
考えてみてほしい。次の役員会で最も役に立つ質問は、最もシンプルなものかもしれない。「もし知能が、かつて電気がそうなったようにあたりまえで誰もが手に入れられるものになるとしたら、私たちは何を違った形で構築できるだろうか」
この問いに真剣に答えようとする組織は、AIの導入や熟練の域を超えていく。そうした組織は、未来の組織構造、未来の価値創造、そして未来のオペレーティングモデルの設計を、今日から始めることになるのだ。


