厄介者のAIデータセンター、「廃熱を資産」に変える──フィンランド首都7万戸の暖房に活用へ

フィンランド首都ヘルシンキの冬の街並み(stock.adobe.com)

電力網を圧迫しないか、懐疑派はヒートポンプや夏場の熱も疑う

取り組みの効果を疑問視する声も、もちろんある。1つめの疑問点は電力だ。なにしろデータセンターは電力網をひっ迫させている原因である。これに対しシディキは、OnZeroと契約した場合としない場合を比較してみせた。石炭火力発電所を閉鎖したヘレンは、他の方法で熱を生成しなければならず、送電された電力で稼働する電気ボイラーやヒートポンプへの依存度が高まっている。

advertisement

OnZeroのヒートファクトリーは、送電された電力をまずAIチップの稼働に使い、発生した熱をヘレンに供給する。つまり、同じ電力量で2つの役割を果たせるということだ。「われわれは別のカテゴリーから電力を引き出している」とシディキは語った。この議論が成り立つのは、熱を必要としている誰かが存在する場合に限られる。

2つめの疑問点は、ヒートポンプ自体も電力で稼働していることだ。OnZeroはサーバーから発生する熱の最大99%を回収しているとしているが、だからといってシステムの稼働にコストがかからないわけではない。供給する熱の温度を95度まで上げるには電力が必要だ。OnZeroによると、同社のヒートポンプは消費電力1単位につき約5単位の熱を供給できるという。

3つめの疑問点は、暖房需要が低下する夏はどうするのかである。OnZeroによればヘルシンキの温水供給システムは年間を通じて稼働しており、余剰熱はドライクーラー(水ではなくファンを使用する閉ループ式ラジエーター)に送られるという。

advertisement

最後にOnZeroは、ヒートファクトリー建設に先立ち、複数のクラウド・AI企業とテナント契約について交渉中だと明かした。ヘルシンキでは他にもデータセンターの廃熱を利用する大規模プロジェクトが進行中だ。米マイクロソフトが建設中のデータセンターは、フィンランドの電力会社フォルトゥムが活用を計画している。

脱石炭後、地域暖房料金を3年連続で下げつつ事業を黒字化

ヘレンの実績こそが、懐疑論者に対する最も説得力のある答えだろう。財務報告書によると、石炭の使用を中止して以来、同社は3年連続で地域暖房料金を引き下げつつ、同事業の黒字化を実現している。ヘレンはOnZeroからの熱購入価格の開示を拒否したが、シルッカによれば、そのコストは木質バイオマスや天然ガスを燃焼させるよりも安価だという。

「我々は、収益性の向上、排出量の削減、そして顧客への価格引き下げという、一種のウィンウィンの仕組みを構築できた」とシルッカは語った。「これで利益を上げられるようにしなければならない」

OnZeroのヒートファクトリーが期待通りの成果を上げれば、AI業界の廃棄物は都市の燃料となり、チャットボットを動かす電力は2回活用されることになる。このアプローチは、世界中でデータセンターの受け入れを後押しするかもしれない。

(forbes.com原文)

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事