厄介者のAIデータセンター、「廃熱を資産」に変える──フィンランド首都7万戸の暖房に活用へ

フィンランド首都ヘルシンキの冬の街並み(stock.adobe.com)

寒い国が抱える暖房問題

米国人にとって、この仕組みは奇異に感じられるかもしれない。米国の家庭では建物の地下室に設置されたガスファーネスを用いたセントラルヒーティングが一般的だ。「世界の多くの地域では、暖房用の熱を各家庭でつくり出している」とシディキは言う。

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一方、フィンランドやスウェーデン、欧州北部では「地域暖房」に頼る地域が多い。これは、電力会社や水道会社が電気や飲料水を供給するのと同じように、中央設備で水を加熱し、地下のパイプを通して家庭や事務所、企業に供給する仕組みだ。

このモデルが、寒冷地ならではの問題を生んでいる。フィンランドの電力はすでにカーボンフリーをほぼ達成しているが、ヘレンのオッリ・シルッカCEOによれば、同社が冬場に必要とする発熱量は最大2.5ギガワットに上るという。ヘレンは2025年に最後の石炭火力発電所を閉鎖し、現在はヒートポンプ、電気ボイラー、木質バイオマスに依存している。2040年までにバイオマスを含むすべての火力発電を廃止するのが目標だ。

OnZeroとの取り組みには、安全保障上の利点もある。フィンランドは天然ガス輸入の多くをロシアに頼ってきたが、ロシアは2022年5月、フィンランドがルーブル建てでの支払いを拒否したことを理由にガス輸出を停止した。だが、国内で発電した電力で熱を生成すれば、隣国から横やりが入ることもない。

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「ほとんどの国で、データセンターの熱は海や空気中に放出され、完全に無駄になっている」とシルッカは指摘した。ヘレンでは2010年からデータセンターの廃熱を自社の熱供給網に活用してきた。今回の取り組みが新しいのは、その規模だ。OnZeroのヒートファクトリーは、ヘレンが2024年に販売した熱量の約9%をまかなうことになる。

サーバーの熱を液冷で回収し水温95度へ、事業費は約1580億円

仕組みはこうだ。OnZeroのサーバーは液体冷却式で、排出される熱の温度は約50~60度になるという。ヘルシンキの熱供給網に必要とされる水温は95度なので、産業用ヒートポンプでそこまで加熱し、市内の配管に送り出す。したがって、データセンターに蒸発冷却塔を設置する必要はなくなる。

システムに用いるハードウェアは市販品だ。シディキによれば、熱回収を行っているデータセンターは他にもあるが、通常は60度の温水を提供するだけであり、回収作業を完了するために必要なヒートポンプや電力は電力会社が負担しなければならない。これに対し、OnZeroは自社敷地内で回収作業を完了し、配管に供給できる状態で熱を販売する。同社の強みは効率性だ。OnZeroが特許を出願している「Whisper」と呼ばれる制御ソフトウェア層がこのシステムを稼働させている。

OnZeroはデータセンターの建物を所有し、内部のスペースを大手クラウド企業やAI企業に貸し出している。同社はこれらの企業から賃料を徴収し、熱をヘレンに販売する。ヘルシンキのプロジェクト規模は120メガワットで、費用は約10億ドル(約1580億円)を見込む。OnZeroはすでにフィンランドで、それぞれ5メガワット未満の小規模施設を2カ所運営している。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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