フランスは毎年約12兆3900億円を捻出しない限り、財政悪化が止まらない
この家計は、じつはフランスである。フランスの国の所得、つまりGDP(国内総生産)を10万ドルとし、すべての数字をその規模に縮めてある。収入の伸びにあたるのは、インフレ分を含めた経済成長率だ。フランスの経済規模は約3兆ユーロ(約531兆円)で、この家計のおよそ3000万倍にあたる。したがって、年2400ドルの差は、約700億ユーロ(約12兆3900億円)になる。しかも毎年である。
2027年予算案は約9兆5600億円の健全化策、赤字はGDP比5%どまり
フランスで予算をめぐる対立が続き、内閣が相次いで倒れてきた背景には、この約700億ユーロ(約12兆3900億円)という数字がある。今議会で審議されている2027年予算案は、歳出削減と増収策を合わせて540億ユーロ(約9兆5600億円)規模の財政健全化策を打ち出しているが、それでも目標は、財政赤字をGDP比5.4%から5.0%に縮めることにとどまる。しかも、700億ユーロという額は、借金を減らすという意味での緊縮策ではない。事態の悪化を食い止めるだけのものだ。
2031年末までに国債残高の半分が満期、低金利での調達はもう望めない
そして、借金の返済期限は実際に次々とやってくる。フランス政府が発行している国債(短期国債を含む)の残高は、約2兆8500億ユーロ(約504兆円)。そのうちの1兆ユーロ(約177兆円)近くは2029年末までに、半分にあたる約1兆4000億ユーロ(約248兆円)は2031年末までに、返済するか借り換えなければならない。こうした国債の利率は平均で約1.6%だ。一方、フランスが今年新たに発行した国債の利回りは平均3.55%で、10年物の金利は今約4.8%に達している。かつての低い金利は、もう手に入らない。
主要8カ国で点検すると、両方で不合格は仏米だけ
ほかの主要7カ国にも、同じ2つの物差しを当ててみる。借金が所得より速く増えているか、新しい借金の金利が所得の伸び率を上回っているか、である。いずれの国も所得10万ドルの家計に縮めて比べると、2つの物差しの両方に引っかかるのは、フランスと米国の2カ国だった。
ただし、フランスと米国では事情が異なる。フランスでは、新しい借金の金利が所得の伸び率のほぼ2倍に達している。米国では両者の差は小さく、しかも米国は自分で刷れる通貨で借金をしている。フランスは、ユーロを自分で刷ることができない。
債務最大の日本は当面安定、スペインとイタリアは財政を立て直してきた
日本は借金が最も重いが、今のところ安定している。不足額が小さく、インフレにともなって所得が増えているからだ。スペインは2012年以降に痛みをともなう財政再建に取り組み、今ではフランスより低い金利で借りられるようになった。イタリアの借金は巨額だが、不足額はほぼ埋まりつつある。
借り換えが進み、利払い費は2030年ごろに2024年のイタリア並みへ接近
家計の話に戻ろう。この家計の古い借金は、毎年少しずつ、より金利の高い借金に借り換えられていく。フランスの借金は返済までの期間が平均で約8年半あるので、1度に入れ替わるわけではないのだ。フランス政府自身の見通しでは、利払いは今年の約2600ドルから、来年は約2900ドル(約46万円)に増える。このペースが続けば、2030年ごろには約3900ドル(約62万円)に近づく。所得10万ドルあたりで見ると、イタリアが2024年に払っていた利払いと同じ水準である。


