AI200とAI250で、クアルコムはCUDA中心のデータセンターに挑めるか
クアルコムにとって、最大の難関はデータセンター市場だ。同社はAI処理用アクセラレーター「AI200」を2026年後半、「AI250」を2027年に出荷する見通しを示している。サウジアラビアのAIインフラ企業HUMAINは、200メガワット規模の設備導入を計画する。クアルコムはアマゾンのクラウド事業AWS、メタ(Meta)、アドビとの合意も発表した。ただし、参入先の市場ではCUDAが標準的な開発環境となっており、顧客は新たな囲い込みを警戒している。
乗り換え費用の低さは、後発メーカーにとって競争上の武器になる
クアルコムの主張は、異なる半導体でも同じコードを使えれば、乗り換え費用が下がるというものだ。半導体メーカーは顧客の処理内容に適したチップの性能や、製品全体の機能で競争すべきだと考える。クアルコムのような後発企業には、既存顧客が離れやすくなる不利益よりも、他社の顧客が参入先を変更しやすくなる利益のほうが大きい。
AMDも、オープンソースのROCmを通じてソフトウェアの開放性を重視している。クアルコムが取り込んだModularの技術は、エヌビディア、AMD、クアルコムの半導体を並列に選べる環境を目指す。ただし、メーカーごとにどこまでの機能を提供し、実際にどの程度安定して動くかによって、その価値は決まる。
エヌビディアの優位性は、半導体と開発環境の一体最適化
エヌビディアには、GPUからCUDA、ロボットの動作を仮想環境で検証する「Isaac」、ロボット向け計算基盤「Jetson Thor」までを一体で提供できる強みがある。機器とソフトウェアを合わせた高度な最適化、統一された開発ツール、予測しやすい性能、AI分野で最大規模の開発者層を備える。特にクラウド上でのAIモデルの学習や、サーバーラック全体を使う推論処理では、システム全体を最適化できる優位性が大きい。
ロボットでは消費電力や安全性も半導体の採否を左右
ロボットなどが現実世界で動作するフィジカルAIでは、半導体の選択基準がさらに複雑になる。消費電力、発熱、機器の大きさ、バッテリー駆動時間、通信接続、センサーとの連携、即時応答、コスト、故障時の安全性を確保する「機能安全」が設計の採否を左右する。クアルコムは携帯機器の開発を通じて、何十年もこうした制約への対応を重ねてきた。
携帯機器で培った経験は、フィジカルAI市場へ参入する上での土台になる。ただし、導入企業は半導体を自由に選べる利点と、特定メーカーの半導体やソフトウェアを一体で使うことで得られる最適化や開発ツールの一貫性を比較しなければならない。
数百台の機械が動く工場では、異なる半導体の組み合わせも選択肢
ロボットには、アプリケーションを実行するプロセッサー、AI用のNPU、GPU、機器制御用のマイコン(MCU)、安全制御用プロセッサー、画像処理用アクセラレーター、通信チップなどが組み込まれる。工場全体では、数百台の機械がそれぞれ異なる部品を利用する場合もある。ソフトウェアを他社製の半導体へ移しやすければ、導入企業は機械ごと、機能ごとに適切な部品を組み合わせられる。
エヌビディアのように半導体とソフトウェアを一体化する方式にも利点はある。しかし、個々のチップの性能を比較する試験だけでは、一体型の環境が適切なのか、異なるメーカーの機器を組み合わせる方式が適切なのかは決められない。


