ModularのMojoとMAXは、複数メーカーの半導体でAIを動かす
戦略の中心となるのは、プログラムを機械語へ変換するコンパイラーの開発基盤「LLVM」と、プログラミング言語「Swift」を開発したクリス・ラトナーが創業したモジュラーだ。同社はプログラミング言語「Mojo」と、AIモデルの推論処理を実行する基盤「MAX」を開発・保守している。目的は、種類の異なる半導体でAIの計算を実行できるようにすることだ。クアルコム、エヌビディア、AMDの製品に対応する。
クラウドのGPUとSnapdragon端末のNPUでコードを共通化
クアルコムは、最大の事業であるSnapdragon製品群にも、このソフトウェア戦略を広げた。2026年9月のSnapdragon Summitで、ラトナーはMojo、MAX、クラウド上でAIを実行する「Modular Cloud」をまとめたソフトウェア環境を発表した。Snapdragon搭載スマートフォンとSnapdragon X2搭載パソコンの他、Snapdragon AR1搭載スマートグラスにも対応する。Wear Elite搭載スマートウォッチ、Sound Elite Gen 2搭載イヤホン、開発中のデータセンター向け「Dragonfly」プロセッサーも対象だ。
クアルコムによれば、開発者はMojoで作ったAI処理用のコードを書き直さずに、クラウド上のエヌビディア製・AMD製GPUと、Snapdragon端末内のNPUを利用できる。クラウドと端末の間でAIエージェントの処理を移す際、半導体メーカーの違いによる開発負担を減らせるという。
クアルコムはIoT機器、ロボット、PCの開発環境にも力を入れる
クアルコムは2025年10月、Arduinoの買収を発表した。Arduinoは、電子機器を試作するためのオープンソースの基板やソフトウェア開発ツールを提供している。利用する開発者は約3300万人に上り、クアルコムはIoT機器や端末内で動くAIを開発する人々との接点を広げられる。
クアルコムはArduinoを自社の開発環境へ全面的に統合するのではなく、ブランドの独立性を維持する。IBMがRed Hatを買収した際に似た方針で、オープンソースの開発ツールと複数メーカーの半導体への対応を維持する。
Edge ImpulseはAIモデルの作成から機器への導入までを支援
2025年に買収したEdge Impulseは、IoT機器からデータを収集し、AIモデルを作成、最適化して実際の機器に組み込むまでを支援する。クアルコムによると、Edge Impulseは買収後もマイクロコントローラー(機器の制御に使う小型コンピューター)、CPU、GPU、NPUなど、他社製ハードウェアへの対応を続ける。
Edge Impulseがサービスを提供する開発者は、買収発表時点で17万人に達していた。
PickNikのMoveItは買収後も他社製機器に対応する方針
クアルコムが新たに買収を発表したPickNik Roboticsは、ロボットの動作を計画するオープンソースソフトウェア「MoveIt」を開発・管理している。MoveItは、ロボットアームなどが物をつかみ、運び、動くための動作計画に使われる。クアルコムは買収によって、実際の機械を動かす「フィジカルAI」向けの開発環境を強化する。
クアルコムはMoveIt 1とMoveIt 2について、既存のオープンソースライセンス、開発者コミュニティーが決める開発方針、他社製ハードウェアへの対応を維持すると約束した。両社は、ロボット用ソフトウェア基盤「ROS」の開発を支援するOpen Source Robotics Allianceの創設会員でもある。
Snapdragon X2搭載PCでLinuxを正式サポート、認証済みUbuntuイメージは2027年前半に提供予定
クアルコムはSnapdragon X2搭載パソコンで、Windowsやグーグルの新しいノートパソコン「Googlebook」向けの環境に加え、Linuxも正式にサポートする方針を発表した。開発者やパソコンメーカーが、Snapdragon搭載機器で利用するソフトウェア環境を選びやすくする狙いだ。
クアルコムはLinux関連ソフトを開発するCanonicalと協力し、2026年末までにLinuxの一種「Debian」への対応を進める。2027年前半には、動作認証を受けた「Ubuntu」のシステムイメージを提供する計画だ。有償サポートのUbuntu Proや、複数のPCを一括管理するLandscapeにも対応する。HP、ASUS、HUMAINは2027年にLinux搭載機器を発売する予定だ。


