高校生のデモがエスカレートする背景には、彼らや彼女たちの将来に対する不安がある。欧州連合(EU)委員会統計局によると、EU加盟27カ国の8月の失業率は季節調整済みの値で6.1パーセント。フランスでは8.2パーセントとEU全体を上回る。
24歳以下だと雇用環境はさらに厳しい。EUの15.4パーセントに対して、フランスは20.6パーセント。加盟国では6番目に高い水準だ。
「高校は資金や教員が不足している。だが、それだけではない。デモはすべてが停滞しているため、この国で自分の居場所を見つけられないフランスの若者たちの声の表れである」とラジオ・フランスは伝える。
フランス政府も危機感を抱く
抗議行動の広がりにフランス政府も危機感を抱く。セバスティアン・ルコルニュ首相は、国民議会で「民主主義の時間」を高校に取り入れることを公表した。授業の半日を校長らと生徒や教職員の対話の時間に充てるという内容だ。
しかし、教育の現場からは「生徒の代表と話し合う仕組みはすでに導入されている」「むしろ、1日も早く通常の授業に戻したい」といった声も上がる。
これに対して、左翼政党の「不服従のフランス(LFI)」のジャン・リュック・メランション党首は、SNSで「10月6日のデモは出発点であり、一連の抗議行動の幕開けになる」などと支援する考えを示した。
ただ、サン・テグジュペリ高校での生徒の抗議行動が座り込みへ移行したタイミングで、LFIの議員2名が同校を訪れたことが明らかになり、政府は「LFIが抗議行動の首謀者で、政治利用している」などと非難。LFIはこうした見方を否定している。
一方、米国のドナルド・トランプ大統領は、自らのプラットフォームの「トゥルー・ソーシャル」に、今回のデモが「制御不能な大量の移民流入」と「イスラム教」によって引き起こされたものと持論を展開している。
筆者は、10月6日のデモで、フランスのテレビ局の取材に応じた、次のような高校生の発言に強く心を動かされた。
「社会的な権利はとても大事。私たちはこれらの権利のために戦わなければいけない。脇に追いやられつつある民主主義を守るためにも。私たちの声を届ける機会はますます減っており、声を上げようとすると叱責されてしまう。だからこそ、こうして集まり続けるのが大変重要」
政治闘争や政敵などの誹謗中傷に明け暮れ、分断を煽る世界の権力者たちに若者の声はどこまで響くのだろうか。


