ありがちなのは、世間や他人が良いとする軸に、自分の意思決定を委ねてしまうことです。「この大学がいい」「この会社がいい」と。でも、それはAIに聞いても同じ答えが返ってくる、均質化された思考です。
identity academyでも、投資は結局のところ意思決定だと教わりました。10%の確率で1000億円もらえるのと、100%の確率で1億円もらえるのと、どちらを選ぶか。期待値は前者のほうが高いですが、どちらがいいかは価値観でしかない。合理的ではないところにこそ、その人の色、人間の価値が表れるのだと思います。
──Gyoseki大会パートナーであるPoint72の日本代表、小川眞治さんは、金融とは関係のない分野の博士号取得や音楽家、元軍人など多様な人材を採用する理由として、「好奇心こそが差別化された人材をつくる」と話していました。
近い話だと思います。バックグラウンドが生む複雑性が、その人にしか取れないスタンスになる。好奇心が強い人は、自分の中で混じり合っている情報が多いので、複雑性が高い。合理性が均質化していくほど、価値を発揮できるはずです。
仕事をしていると、同じ業種の人とばかり過ごし、思考の型が均質化しがちです。だから、複雑性を自分の中で持つように意識していかないといけないと思っています。
──江口さんが大切にしているスタンスはなんですか。
自分が今、「楽しいな」と思えていることを、その瞬間瞬間、積み重ねていくことです。すごく大きな像を描いて向かっていくことも素晴らしいと思うのですが、これだけ変化の多い時代では不確実性が高いからこそ、今を楽しんでいくことが未来になっていくと思っているんです。
ありがたいことに、今は本当に楽しめています。大きく3つの軸がそろっているからだと思っています。ひとつ目はAIという分野の目まぐるしい変化、ふたつ目は日々学べる環境に身を置けていること、3つ目は信頼できる優秀な人たちと一緒に仕事をできていることです。
──最後に、第5回大会に挑む学生たちへメッセージをお願いします。
金融を志す方へのエールは柳さんたちにお任せして(笑)、私からは、まったく違う分野の人でも参加できるし、必ず学びがある大会だということを伝えたいです。迷っているなら、間違いなく参加したほうがいい。人とのつながりも、実質的な学びも得られます。もし結果が出れば、思いもよらない楽しい方向に人生が進むかもしれません。異分野に踏み出した経験は、その人の複雑性になり、その人にしかない価値になるはずです。

江口航志◎Sakana AI リサーチエンジニア。東京大学工学部電子情報工学科卒業。同大学院在学中、トロント大学に留学しながら第2回Gyoseki大会に出場し、優勝。2024年にSakana AIでインターンを始め、大学院修了後の25年に正式入社した。


