経営者の「本」から信念を読む
柴田さんのように、目先の利益より自らが信じる道を貫く経営者の姿勢は、決算の数字だけではなかなか見えてきません。とはいえ、個人投資家が経営者に会って話を聞く機会は限られます。
そこで個人投資家の方々に私がすすめたいのは、株を持つ会社や投資を考えている会社の経営者が書いた本を読むことです。経歴や成功談をなぞるだけの本もあれば、経営への考えが本人の言葉であふれ出ている本もある。そのちがいは、ページをめくれば案外すぐにわかります。後者のような本を書く経営者は、業績が一時的に落ち込んでも、方針を簡単には変えません。本は、長く付き合える投資先かどうかを見極める手がかりになるのです。
柴田さんご自身も、25年11月に『管理職を全廃しました──社員全員が自走する「ティール型組織」』(ダイヤモンド社)を上梓しています。社員が自ら動く組織をどうつくってきたのかを綴った、まさに後者の一冊です。
その組織形態は、急速に進展するAIの時代にも強みになっています。AIに関する本を多数執筆している私の知人は「あそこまでAIを使いこなしている上場企業は珍しい」と驚いていました。組織に階層がないので、AIの使い方に精通する若手が出した提案が、速やかにサービスや業務に生かされるのでしょう。
決済データも、AIとの組み合わせでますます使い道が広がるはずです。クレジットカードを持てない人でも、毎月きちんと支払ってきた実績があれば、その信用を測ることができる。家賃の保証や分割払いを担う信販など、既存の金融機関が担ってきた領域でも、この会社は台風の目になり得ると私は見ています。
そうした可能性を、これからどう形にするのか。柴田さんの次の一手を楽しみにしています。
おおひつ・なおと◎ミダスキャピタル専務取締役パートナー。1988年、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。複数の営業店勤務を経て、本部にてM&A業務や法人取引獲得を推進。2022年に同行常務執行役員リテール事業法人部門・副部門長に就任。年間1000社ものスタートアップ企業の経営者と面談を重ねてきた。24年に銀行員として初めてNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演。25年4月、ミダスキャピタル社外取締役、同年10月から現職。26年3月、ネットプロテクションズのコーポレートアドバイザー(顧問)に就任。同年9月には初の著書『「伝説のバンカー」と呼ばれた男』(日本経済新聞出版)を上梓。


