経営・戦略

2026.10.16 11:15

伝説のバンカー・大櫃が語る、伸びるリーダーの条件(第3回)ネットプロテクションズ・柴田の「ティール経営」

事業より「社員」を自慢する社長

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振り返るとその片鱗は、初めてお会いした日から見えていました。当時、銀座にあったオフィスを訪ねると、入り口に白いトロフィーが飾られていました。若い人が働きたい職場として表彰されたときのものだといいます。柴田さんは、それを本当にうれしそうに自慢するのです。「私たちの会社に優秀な若い人が入ってくるのは、働きやすいからなんです」と。

一般的な経営者は、ゼロからつくり上げた自社のサービスを熱心に説明することが多いように思います。ところが彼がひたすら語ったのは、社員、それも若い社員のことでした。

ネットプロテクションズは12年に管理職を廃止し、18年には社員同士が評価し合う人事制度「Natura」を導入しました。同社は、上司の指示にも全員の合意にも頼らず、社員一人ひとりが自ら判断して動く「ティール組織」の代表例としても知られています。

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柴田さんは若手を含む全員と親しく、一人ひとりが何をしたいのかを常に把握している。社員から社長へ辛辣な意見が出ることもありますが、彼はそれさえ楽しそうに話します。そして「みんなの会社なんです」「私がいちばん仕事がないんです。みんなが成長するから、日に日に仕事が減っていく」と、さらりと口にするのです。

新規事業も、本人いわく「若い人がやりたいと言うから、やらせているだけ」。台湾進出も、若手社員が海外で事業をやりたいと手を挙げたのが始まりでした。当初は苦戦が続いたといいますが、現地の後払い決済「AFTEE」はいまや会員数200万人を超えるサービスに育ち、23年からはベトナムでの展開も始まっています。

柴田さんは、若手と正面からぶつかって議論するタイプではありません。少し引いた位置から「それって本当にいけるんだっけ」と問いかける、いわば壁打ち相手のような存在です。下から上がってきた案の是非を判定するだけの、一般的な会社の意思決定とは異なります。そして最後は若手の背中を押し、その事業の損益の責任は、社長として自ら引き受ける。彼の粘り強さは、若手の挑戦を守るためのものでもあるのでしょう。

そんな柴田さんを見て思い出すのは、見返りを求めずに好きなアイドルやスポーツ選手を応援するファンの姿です。会社が成長し、サービスが広がり、若い社員が活躍する。その姿を見ること自体が、柴田さんにとっての喜びなのだと思います。

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文=加藤智朗

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