経営・戦略

2026.10.16 11:15

伝説のバンカー・大櫃が語る、伸びるリーダーの条件(第3回)ネットプロテクションズ・柴田の「ティール経営」

「やめた事業は一つもない」

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ただし、新しいサービスを育てるたびに先行投資がかさむこのビジネスモデルを続けることは、資金を出す側との緊張と背中合わせでもありました。

ネットプロテクションズへ出向したばかりのころから、柴田さんは「こんなことをやりたい」と親会社に提案を重ねてきたといいます。しかし予算はつかず、決裁も下りない。提案が手つかずのままだったこともしばしば。それでも自分たちの手で、少しずつ事業を形にしていきました。

株主が替わってからも、構図は変わりません。先行投資を続ければ、目の前の利益は削られる。株主が利益を求めるのは当然ですから、柴田さんは常に、投資の意味を問われる立場にありました。

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それでも彼は、三つの投資を止めなかったといいます。戦力になるまで時間がかかっても、若手を採用して育てること。すぐには利益に結びつかないシステムに投資し続けること。そして、一つの事業が育てば、その利益を次の事業に振り向けること。即戦力の中途採用で人を揃え、目先の黒字を積み上げるほうが、経営者としてははるかに楽だったはずです。

その粘りは、いまの同社の強さにつながっています。採用の方針を曲げなかったことで、上場企業という看板のない時期から、優秀な若手が集まり続けました。システムへの投資は、膨大な取引を自動で審査し、請求まで一貫して処理する仕組みとなって、事業を支えています。そして、次々と育ててきた事業のうち、NP掛け払いとatoneを合わせると、いまやグループ全体の取扱高の半分を超えます。

最近、柴田さんにあらためて、苦しい局面をどう乗り越えてきたのかを聞く機会がありました。答えはとてもシンプルでした。「あきらめない。一度決めたら、やり遂げるまでやる。それだけです」と言うのです。

ネットプロテクションズの柴田社長
ネットプロテクションズの柴田社長

印象的だったのは、「やめた事業は一つもない」と話していたことです。予算が限られるなかでは、すべての事業に同時に投資することはできません。外から見れば撤退したように映る事業もあります。しかし彼にとって、それは手放したのではなく「社員と相談しながら」優先順位を後ろにしただけだといいます。

「社員と相談しながら」。実はこの一言に、柴田さん独自の経営スタイルが垣間見えるのです。

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文=加藤智朗

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