上限10万円から始める与信
企業間取引の掛け払いの事業についても、最初、私は懐疑的でした。柴田さんから事業について相談を受けたとき、企業を相手にした小口の与信は、銀行も何度か挑んでは苦戦してきた領域だと考えたからです。
いまもよく覚えているのは、そのときに彼が挙げたラーメン店の例です。一軒のラーメン店が製麺業者に払う代金は、月に10万〜20万円ほど。よく売れる店でも50万円ほどです。支払いが滞っても、損失はその範囲に収まる。だから最初は上限を10万円に抑えて後払いを認め、きちんと払い続ければ20万円、30万円と枠を広げていけばいい、というのです。
その与信を支えているのが、取引の積み重ねから得たデータです。後払いでは、代金の未回収をゼロにはできません。なかには、最初から代金を払うつもりのない悪質な申し込みもあります。ただ、取引を重ねるなかで、不払いにつながりやすい申し込みの傾向がデータとして見えてくる。審査の精度が上がれば未回収は減り、薄い手数料でも利益が出るようになります。
結果を見れば、外れていたのは私の見立てのほうでした。NP掛け払いだけを見ても、26年3月期の取扱高は3438億円で、前の期から4割近く伸びています。25年にはみずほ銀行も約460億円を投じて法人カード事業を手がけるUPSIDERホールディングスを子会社化し、この領域に本腰を入れています。ただ、データを活用した与信を法人の世界に持ち込んだ先駆けは、ネットプロテクションズだったのではないかと思います。
柴田さんは出会った当初から、データの蓄積こそが強みになると話していました。大手IT企業でもないのに、データビジネスを初めから志向し、コツコツとここまで形にした会社を、私はほかに知りません。


