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2026.11.05 17:15

中東のビジネスの中心はどこに移るのか?──PIFが変えた中東マネーの地図

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かつて中東ビジネスの代名詞だったドバイ。だが今、その一極集中に変化が起きている。同じUAEのアブダビ、そしてサウジアラビアが、巨額の政府系マネーを背景に存在感を高めている。

日本のゲーム会社の株主名簿にはサウジの政府系ファンドが並び、クリスティアーノ・ロナウドはサウジのクラブでプレーする。アブダビでは、ディズニーのテーマパークや「スフィア」の計画も進む。文化、スポーツ、エンタメ、投資——中東のマネーは、いまどこへ向かっているのか。

中東各国で働き続け、政府関係者から現地のビジネスパーソン、オタクコミュニティまで幅広いネットワークをもつ鷹鳥屋明氏に聞いた。


ドバイはなぜ主役になれたのか

ドバイの成功は、偶然ではなく30〜40年かけた国家のグランドプランがあり、それを愚直に守り続けた結果です。世界のハブにする、ビジネスをしやすくする、物流の拠点にする——決めたことを、ずっと形にしてきたことが成功の要因でした。また、アジア、ヨーロッパ、アフリカを結ぶ地の利もありました。

人の流れは、エミレーツ航空でつくりました。1985年にたった2機のリース機から始まった会社が、今では約270機を擁して世界およそ80カ国・152都市を結び、年間5500万人以上を運ぶ、中東最大の航空会社です。物流を握るのはジェベル・アリ港。2024年のコンテナ取扱量は約1550万TEUで、世界9位、中東では断トツ。サウジ最大のジッダ港を凌駕します。

面白いのは、これだけの経済を築きながら、ドバイのGDPに石油が占める割合は1%を切っていることです。石油がほとんど出ないからこそ、ハブ機能とブランディングに徹するしかなかった。その割り切りと一貫性こそが、ドバイの強さだったと思います。

ただ、ドバイには構造的な限界もあります。あくまで「点」で、面積がない。そもそもドバイは、アブダビなど7つの首長国が集まって構成される連邦国家、アラブ首長国連邦(UAE)を構成する一つ。首都機能はアブダビが担っています。ドバイの人口はおよそ480万人ですが、UAE国民は1割ほどにすぎず、残り約9割は外から来た住民です。つまり国の土台を、外国人が支えている。

そして、忘れてはいけないのが、同じUAEを構成するもう一つの重心、アブダビです。UAEの石油資源の大部分を抱え、連邦の富を支えてきたのはこちらです。ドバイが「見せる都市」だとすれば、アブダビは「富を支える都市」。ムバダラやADQといった政府系投資会社を通じ、半導体、AI、防衛産業などへ投資を広げています。

その重心が、今まさに動き始めています。2026年に開通したエティハド鉄道で、ドバイとアブダビは約1時間でつながりました。羽田・成田を行き来する感覚で2つの都市を移動できるようになり、これまでドバイに集まっていた人・企業・金が、根本的に資金力のあるアブダビ側へと流れ始めています。アブダビはUAEの石油資源のおよそ8割を握る、まさに「本店」です。この一本の線路が、湾岸の勢力図を静かに書き換えようとしています。

なぜ彼らは「世界一」を競うのか

そもそも、なぜ「主役の座」がこれほど問題になるのか。中東を理解する鍵は、意外なほどシンプルです。

サウジアラビア、UAE、カタールなど中東産油国は、似た環境で似た国家戦略を行っている隣人同士。だからこそ「我々は違う」と差別化を常に求めています。言ってしまえば、熾烈な国同士の威信の張り合いとも言えます。

その物差しはまず「世界一」「世界初」「世界最優秀」とわかりやすさが先立ちます。ドバイが828メートルのブルジュ・ハリファを建てれば、サウジはジェッダに1000メートル級のタワーを計画し、リヤドでは2000メートル級「ライズタワー」の構想まで浮上する。

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文=雨宮百子 編集=松崎美和子

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