※この記事は2014年2月発行の米誌「Forbes」に掲載されたものです。
9月中旬、フォルクスワーゲン(VW)・オブ・アメリカは問題を抱えていた。翌年の春まで新型車の投入予定がなかったのだ。消費者の記憶の真ん中にVWをとどまらせるため、同社のマーケティング担当者と広告代理店2社のスタッフは、米サンフランシスコ南部にあるYouTube本社の「グーグル・ブランドラボ」を訪れた。「ブランド構築の技術と科学を広める場」とされるこの豪華な会議スペースは、実質的にはクリエイターのための最高の遊び場である。ふかふかのソファ、アルコール、そして32枚の薄型ディスプレイで約28m²(300平方フィート)を埋め尽くした圧巻の巨大スクリーンが備え付けられている。
ブランドラボの一角で、グーグルのジェフ・ロジックがVWの担当者たちを相手に仕事を開始した。彼は、ブランドラボが成功したと評価する動画広告キャンペーンを矢継ぎ早に紹介した。その熱心な語り口は実に見事である。過去1年間にわたり、コカ・コーラからトヨタに至る広告主候補向けに100回以上開かれた同様の「非公開ワークショップ」によって磨き上げられてきたのだ。
VWには立ち遅れがあった。ロジックはライバルの日産メキシコが制作した13本の旅行ショート動画に光を当て、意図的であれ無意識であれ、VWの遅れを浮き彫りにした。彼の言いたいことはもっとシンプルだ。あまりに露骨な売り込みでストーリーをごちゃごちゃさせてはいけない、という点だ。「クルマを売ろうとすることに遠慮する必要はありません」とVWの幹部が反論した。ロジックは即座に切り返した。
「もちろんそうです。しかし、ストーリーを伝えているときと、売り込んでいるときの違いを慎重に見極める必要があります」
もっともな指摘である。ロジック自身が明らかに売り込みをおこなっていた。そしてそれは、グーグルの針路を変えるための商材だった。「クリックの王者」であるグーグルが、世界屈指の洗練された広告主に対し、もはやクリックにとらわれずイメージ広告に注力すべきだと説いているのだ。最高経営責任者(CEO)のラリー・ペイジは、自動運転車、ウェアラブル端末、あるいは同社のさまざまな「ムーンショット(壮大な挑戦)」について、いくらでも熱弁を振るうことができる。



