Cloudflare(クラウドウレア)は、JavaScriptとTypeScriptで書かれたプログラムの実行環境「Deno」を開発するDeno社を買収した。Denoの開発者ライアン・ダールは、JavaScriptをサーバー上で動かす仕組み「Node.js」の生みの親でもある。買収の中心となる技術は、Denoチームが開発したオープンソースソフトウェア「celld」だ。Cloudflareはcelldを取り込み、サーバーレスサービス「Workers」で構築したアプリを、顧客企業が自社サーバーでも運用できるようにする計画だ。
Cloudflare Workersには、開発したアプリを他社の基盤へ移しにくく、Cloudflareを使い続けざるを得なくなるという批判があった。自社設備でもアプリを動かせるようになれば、弱点とされてきた点が、むしろ導入を後押しする材料へ変わる。サーバーの管理を開発者が意識せずにプログラムを実行する「サーバーレス」や、利用者に近い拠点で処理する「エッジ」の基盤を比較する最高情報責任者(CIO)にとっても、他の環境へ移せるかどうかの判断材料になる。ただし、Denoを利用する開発チームには、買収に伴い予定外のシステム移行が必要となる。
Cloudflareは買収額を公表していない。TechCrunchの報道によれば、Deno社が調達した資金は、ベンチャーキャピタルのセコイアが主導したシリーズAを含め、合計2600万ドル(約41億800万円)に上る。ダールと共同創業者バート・ベルダーを含むDenoの全チームは、Cloudflareに加わる。
Workersを自社サーバーで動かす鍵は「celld」
Cloudflare Workersは、同社が持つ世界各地のネットワーク拠点で小規模なJavaScriptプログラムを実行するサービスだ。アプリの処理が終わってもデータや処理の状態を保存しておくため、Cloudflareは「Durable Objects」という仕組みを提供している。個々のDurable Objectは、外部から指定して呼び出せる小さなサーバーのように動き、それぞれがSQLiteデータベースを持つ。
例えばチャットアプリなら、会話チャンネルごとに別のDurable Objectを割り当てられる。利用者の接続やデータをチャンネル単位で管理することで、処理を複数のマシンへ分散できる。Cloudflareは2022年、Workersの実行環境「workerd」をオープンソースとして公開した。しかし、Workersを開発した技術者ケントン・ヴァルダによると、workerd単体ではDurable Objectsを単一の実行インスタンスでしか扱えない。開発環境でのテストには使えても、多数のサーバーに分散させる本番運用には対応できない。
celldが複数サーバーへの処理の振り分けとデータ保存を担う
Denoが2026年8月に公開した「celld」は、Rustというプログラミング言語で開発された単一の実行ファイルだ。複数のサーバーにまたがってWorkersとDurable Objectsを動かせるようにするもので、外部サービスとして必要なのは、データを保存するオブジェクトストレージだけである。
運用担当者は、共通のデータ保存先となる「バケット」を用意し、複数のサーバーでcelldを稼働させる。どのサーバーが処理を担当するか、通信をどこへ振り分けるか、データをどう保存して維持するかは、celldが管理する。ダールとベルダーは、celldの機能をworkerdへ統合し、企業が自社で管理するサーバー上でWorkersを動かす「セルフホスティング」を、Cloudflareが正式に支援する取り組みを率いる。
統合が実現すれば、企業はCloudflareのネットワーク上で構築したアプリを、プログラムを書き直さずに自社データセンターへ移せる。ヴァルダによると、ネット通販向けサービスのShopifyは2022年、「Workers for Platforms」を採用する条件として、実行環境のオープンソース化を求めた。Workers for Platformsは、他社のプログラムをCloudflareの基盤上で実行するサービスだ。workerdを利用し、すでにCloudflareから他の環境へ移った顧客がいることも明らかにしている。



