家賃高騰の原因は短期賃貸以外にも
住宅販売価格の上昇と短期賃貸物件数の増加との間に相関関係は見られるものの、因果関係までは示されていない。多くの短期賃貸プラットフォームは、根本的な問題は「住宅不足」にあると指摘している。
ドイツの調査企業スタティスタが2025年、EU加盟8カ国で8000人を対象に実施した調査によると、住宅価格の高騰の原因として、建設費や地価の上昇、移民の増加、賃金の上昇、経済的要因が、旅行者向け短期賃貸物件の増加より上位に挙がった。同調査では、2021年時点でEU域内にある住宅の2割近くが空き家、別荘、または季節限定の住居となっていることが明らかになった。これが住宅市場に負担をかけていることは疑いようがない。
特定の地域に集中する短期賃貸物件
欧州委員会共同研究センターの調査によると、EU域内の利用可能な住宅のうち、旅行者向けの短期賃貸物件が占める割合はわずか1.2%に過ぎないことが示された。スタティスタの統計に基づけば、EUの住宅総数2億5000万戸のうち、短期賃貸物件は約300万戸ということになる。他方で、地域によっては、短期賃貸物件の割合が住宅全体の20%にまで達している。
このように、短期賃貸だけが欧州の住宅危機の原因ではないものの、過剰観光が問題となっている地域では、民泊の増加が深刻化しているのも事実だ。したがって、EUの法案は、どのような場合に介入が必要かを見極める上で有益な一歩となり得るだろう。この案は、公的機関に短期賃貸を制限する権利を与えたり、特定の制限を推奨したりするものではないが、都市が賃貸物件の制限方法を決定するための指針を示し、EU諸国間の共通の枠組みと法的明確性をもたらすものとなり得る。
過剰観光に悩まされてきたバルセロナの対策
スペインの人気観光地バルセロナでは、住宅全体の7%強が短期賃貸物件として貸し出されている。この割合は、仏パリでは3%未満、米ニューヨークでは2%未満に過ぎない。このため、バルセロナでは過剰観光に抗議する地元住民にとって、またスペイン政府にとっても、短期賃貸は大きな関心事となっている。
スペイン政府はすでにエアビーアンドビーに掲載されていた6万5000件の短期賃貸物件を同サイトから削除したほか、外国人住宅購入者に対する課税を導入した。さらに、約1万件の旅行者向け短期賃貸物件の認可を2028年11月に失効させる計画も進めている。
スペインの首都マドリードで9月、家賃の大幅な値上げに伴い、87歳の女性が70年以上にわたり暮らしていた自宅から立ち退きを強いられたことを受け、同国では住宅問題が再び大きく取り上げられることになった。女性はスペインの住宅危機を象徴する存在となり、手の届く価格の住宅を求める地元市民の闘いの新たな顔となった。
一方で、スペイン政府の政策が最善の策ではないと考える向きもある。その理由には、短期賃貸物件が減ると旅行者はホテルに流れる傾向があることに加え、短期賃貸を利用する旅行者による消費が地域経済から失われる可能性が挙げられる。また、この政策では、別荘や住宅供給不足の問題も解決されない。
だが、バルセロナ当局は実際に短期賃貸市場に大規模に介入しており、この手法の有効性が試されている。EUの新たな提案の下で、住宅需給の逼迫状況を検証する仕組みの構築が欧州で進められる中、同市の取り組みは有益な一歩ではあるものの、唯一の解決策というわけではない。EUの法案が成立するには、欧州議会の承認を経る必要がある。


