他人の作品に頼らず、8カ月かけてAI学習用の映像を制作
InterPositiveの事業を理解する上で重要なのは、AIの学習に使う映像をどのように集めたかという点だ。アフレックはブルームバーグとの対談で、既存の動画生成AIの多くが、自分の知人が制作に関わった作品を学習に使っていたと語った。そうした学習データの使われ方に抵抗を感じ、他人の作品を学習に使う仕組みに依存した事業は成り立たないと考えたという。
そこでアフレックは、自社で学習用の映像を撮影する方法を選んだ。「独自のデータセットを作らなければならなかった」と説明している。費用を賄うための資金を集め、カメラなどの機材をそろえて、約8カ月にわたり撮影を続けた。
既存のAIモデルに映画の撮影技法を学ばせ、作品ごとのモデルも作る
InterPositiveはまず、公開されている汎用の動画生成AIモデルを土台に、独自撮影した映像を追加学習させた。映画特有の映像の特徴をAIに覚えさせるためだ。さらに、個々の映画の撮影素材を学習させ、その作品専用のモデルを作る。作品専用モデルは、それぞれの制作側が保持して使う。
アフレックは、映画制作者が「自分たちで作り出した学習成果の恩恵を受けられる」と説明した。マーケティング上の強みも、技術の性能だけではない。学習データの出所、完成したモデルの所有者、利用方法の決定者を、製品の実演前から明確に説明できることにある。
「AIを使う映画では雇用が減らない」、その主張を裏付ける数字はあるか
アフレックが最も強く批判するのは、AIへの恐怖をあおる言説だ。世間が抱くAIのイメージを「曖昧で抽象的な恐ろしい異星人」に例え、人類滅亡やホワイトカラーの大量解雇という予測を「プロパガンダ」と呼んだ。
米経済誌『フォーチュン』が取り上げた発言では、アフレックは「AIはすでに映画で使われており、制作現場の人数は変わらない。実際には、雇用される人はむしろ多い」と主張した。ただし、主張を裏付ける作品別の雇用人数は示していない。
米国の映画・動画制作業では雇用者数が10年間で21%減少
米労働省の統計によると、米国の映画・動画制作業の雇用者数は2016年2月から2026年2月までに4万9000人減った。10年間で21%の減少に相当する。雇用減少には複数の原因があり、撮影現場で生成AIが使われる前から始まっている。
それでも、映画制作で雇用が増えたというアフレックの説明は、業界全体で雇用が減少している現実を踏まえて評価されることになる。
米国人の約7割は、今後20年でAIによって仕事が減ると予想
世論もAIの雇用への影響を懸念している。米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査では、米国の成人の約7割が、今後20年間でAIによって仕事が減ると予想した。2024年から2026年の2年間で、この割合は7ポイント上昇している。
調査対象の37カ国のうち34カ国でも、AIによって仕事が増えると考える人より、減ると考える人のほうが多かった。アフレックはAIへの懸念をすべて退けているわけではない。「AIで心配なのは、学校に通う自分の子どものことだ。子供がAIに依存して無気力になることや、責任ある利用のあり方が心配だ」と語った。学習性無力感とは、何をしても状況を変えられないと考えるようになり、自分から行動しなくなる心理状態を指す。


