ビザとマスターカード、ステーブルコイン「OUSD」運営会社に出資──カード決済の収入減に備える戦略とは

olga_demina - stock.adobe.com

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ビザ(Visa)とマスターカード(Mastercard)は過去2年間、ステーブルコインを自社の決済ネットワークで扱う新たな形の通貨として、投資家に説明してきた。両社は米国時間2026年9月30日、米ドルに価値を連動させるステーブルコイン「OUSD」の運営会社に出資し、共同所有者となった。カード決済と競合し得る通貨への出資には、両社が収益を守ろうとする狙いがある。

カード決済を脅かすOUSDに出資するのはなぜか

OUSDは9月30日に提供を開始した。利用できるブロックチェーンは、イーサリアム、ソラナ、暗号資産取引所コインベースの「Base」、決済サービス大手ストライプが支援する「Tempo」の4つだ。運営会社オープン・スタンダードには、コインベース、マスターカード、ショッピファイ、ストライプ、ビザの5社が創業パートナーとして参加し、それぞれ同じ割合の株式を取得した。5社はOUSDの売買や交換に必要な流動性を確保するため、合計10億ドル(約1580億円)超の資金供給を約束した。

OUSDの実際の発行業務は、オープン・スタンダードとの契約に基づき、ストライプ傘下のブリッジが担う。ストライプでは、資金を保管・管理する「Treasury」、決済カードを発行する「Issuing」、海外の受取先に送金する「Global Payouts」の各サービスで、OUSDを標準のステーブルコインとして採用している。

ビザとマスターカードの出資は、事業環境の変化に備える「ヘッジ」と考えられる。両社にとって最も収益性が高いのは、国境を越える決済(クロスボーダー決済)に関する手数料収入だ。しかしOUSDは、国をまたぐ資金移動をほぼ無料で行えるよう設計された。ステーブルコインにカード決済の市場を奪われても、その普及による利益を出資先から得られる。普及が限定的に終わった場合の負担も、出資資金と運営への参加にとどまる。

OUSDは準備資産の利息を流通パートナーに分配する

米ドルなどの法定通貨に価値を連動させるステーブルコインでは、発行者がトークンの裏付けとして現金や短期米国債を保有し、その利息を収入とする。問題は、準備資産から生じた収益を、発行会社とステーブルコインを普及させる企業でどう分けるかだ。

USDCでは流通を担うコインベースが収益の多くを受け取る

米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」を発行するサークルの決算は、収益配分の実態を示している。同社の2026年4~6月期は、売上高と準備資産収益の合計が7億100万ドル(約1108億円)だった。これに対し、流通・取引に関する費用として4億1000万ドル(約648億円)を支払い、大半がコインベース向けだった。

2023年に締結した契約により、コインベースは自社サービス上で保有されるUSDCから生じる準備資産収益を全額受け取る。他のサービスなどで保有されるUSDCについても、残余収益の半分を受け取る。両社は2026年8月18日、この契約を同じ条件で2029年まで延長した。USDCの発行、法令順守、規制リスクへの対応はサークルが引き受ける。それでも、USDCを利用者に届けるコインベースが収益の大きな割合を得る構図だ。

OUSDは準備資産収益に加え、運営会社の株式も配分する

オープン・スタンダードは、流通パートナーが収益を受け取る仕組みをOUSDの事業モデルに組み込んだ。参加企業は、少額の管理手数料を差し引いた準備資産収益を全額受け取れる。企業が米ドルをOUSDに換える際の発行手数料や、OUSDを米ドルに戻す際の償還手数料もかからない。

オープン・スタンダードの最高経営責任者(CEO)、ザック・エイブラムスはコインデスクに、向こう4~5年で同社株式の「圧倒的大半」をパートナーへ配分すると語った。各社への配分割合は、それぞれが生み出すOUSDの供給量と取引活動に応じて決まる。創業した5社にも特別な収益分配の優遇はなく、創業時に取得した株式に加えて、他の参加企業と同じ条件で報酬を受け取る。

ステーブルコインを顧客に広める企業にとっては、従来の発行会社が提示してきた条件より有利な仕組みだ。ビザとマスターカードは、コインベースのように暗号資産取引所を通じてコインを流通させる企業ではない。それでも、自社の決済ネットワークが扱う取引量に応じて報酬を得る道が開かれる。

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