文章や画像を扱うAI並みの知能は、まだロボットは備えていない
これまでの進歩について問われたポーターが引き合いに出したのは、マルチモーダルモデル(文章だけでなく画像や音声などもまとめて扱えるAIモデル)である。
「マルチモーダルモデルが持つほどの知能を、ロボットのように体を持つ形に組み込む取り組みは、まだ本当の意味では見られていないと思います」とポーターは言う。そのうえで、その最前線に近づく例として、看護の現場向けの転倒検知のプロジェクトを挙げた。
ロボットの頭脳が汎用品になったら、価値はどこで生まれるか
エドシンガーは、学習済みのパラメーターが公開され、誰でも手元で動かせるAIモデルである「オープンウェイトモデル」の登場が、ロボットにとって何を意味するのかを語った。話題は、ロボットを動かすための汎用的なAIモデル、いわゆる「ロボット基盤モデル」の分野である。
「ロボット基盤モデルの分野では、コモディティ化が進むと私たちは考えています」とエドシンガーは言う。「オープンウェイトモデルは、最先端のものに比べれば少し古く、少し遅れているかもしれません。それでも、かなり優秀になっていくでしょう。そうなれば、価値が生まれるのは、こうしたモデルを製品に組み込み、使う人がはっきりとした投資対効果(ROI)を得られるようにするところです」。
シミュレーションと強化学習で鍛えたバク転ロボット、複雑な動きも実機で再現
シュプランガーが付け加えたのは、シミュレーション(仮想空間での模擬実験)と強化学習の組み合わせである。強化学習とは、試行錯誤を通じて、よい結果につながる行動を学んでいくAIの手法を指す。
「この組み合わせには、とても感心しています。とくに動きの激しい作業ではそうです」とシュプランガーは言う。「中国から出てくる、バク宙をするロボットはどれも、基本的にシミュレーションの中で訓練されてから、実際のロボットに載せられています。それで、かなり複雑で、動きの激しい作業をこなしているのです」。
サンダーは、地政学との関わりに話を向けた。
「ロボット分野で米国と中国のどちらが先を行っているのか、それを測る指標はあまり耳にしません」とサンダーは言う。「でも、それはおそらく大きな意味を持つでしょう」。
原価で中国と競うことは難しくても米国内で生産は可能
ポーターは、米国側が抱える課題を指摘した。
「純粋に製品1台あたりの採算、つまりユニットエコノミクスの観点からいえば、製造原価で中国と競うのは難しいのが実情です」とポーターは言う。ただし、製造より川下の段階には、まだ革新の余地があることも認めた。「まだ最安値を競う段階にはなっていません。ただ、自分たちのソリューションがきちんと成り立つように、ユニットエコノミクスの目標は達成しなければなりません。米国で作りながら、それを実現することはできると思います」。
「米国製で、私たちの用途に合う部品を調達するのは、とても難しいのです」とエドシンガーは言う。部品によっては、そもそも米国では作られていないものもあるという。


