登壇者が率いる企業はどこも、ロボットを人型にしない道を選んだ
実用面からのデザインについても議論があった。
登壇者たちに共通していたのは、いずれの会社も、ロボットを昔ながらの人型として作る道を選んでいないことだ。
ソニーAIのプレジデント、ミカエル・シュプランガーは、同社の自律型の卓球ロボット「Ace(エース)」の設計について語った。動きを高い頻度で細かく制御する仕組みに加え、危険な動きになりそうなときには、別の安全な動きにすぐ切り替える仕組みも取り入れているという。
「腕の付いた大きなルンバ」は、人の姿をまねず必要な機能だけを残した結果
エドシンガーは、Hello Robotのロボットのデザインを「腕の付いた大きなルンバ」と表現した。
「長く細い支柱が1本あって、とてもスリムで、とても簡素です」とエドシンガーは言う。「私たちはこれを『ロボット版キュビズム』と呼んでいます。人の形を作ろうとするのではなく、人の体のつくりをいったん分解し、その形に何をさせる必要があるのかをよく考えたうえで、何かに組み立て直しました。ざっくり見れば、人の形の名残があると言えなくもありません。ただ、私たちが何より重んじているのは実用性です」。
エドシンガーによれば、人型でない形のほうが、一般にコストが低く、設計もしやすいという。
アマゾンでは現場を問わず脚は利点にならず、電力を食うお荷物でしかなかった
「私たちも、あえて人型にはしていません」とポーターは言う。アマゾンのチームが人型を検討したところ、数十種類ある作業のどれをとっても、最適な設計ではないと分かったのだという。
「アマゾンのどの現場でも、脚が有利に働くことはありませんでした」とポーターは言う。「弱点にしかならなかったのです。電力を大量に食いますから」。
ロボットをより安全にするには、重心を低くすることだ、とポーターは言う。
目を低く付けたロボットから人が読み取る、人間並みではなく盲導犬並みの賢さ
ポーターが詳しく説明したデザインの工夫で、もう1つ、とても興味深いものがある。
ポーターの説明をかいつまんで言えば、同社はロボットの目をあえて低い位置、つまり地面に近いところに付けている。ロボットの能力が人間には及ばないことを伝えるためである。
「目の位置を低くしているのは、人間並みの知能があると思わせないためです」とポーターは言う。「伝えているのはむしろ、盲導犬くらいの知能がある、ということです。そうやって、このロボットにどのくらいのことができるはずなのかという見込みを、人に伝えているのです。36の言語を話せて、頼めば何でもこなし、がんの診断でもおそらく病院の医師と同じくらい詳しい。本当にそう伝えたいのなら、目の位置はぐっと上がるかもしれませんね」。
ミツバチ型や魚型から血管内を想定した極小型まで、一気に多様化するロボットの形
もう1人のパネリストで、AltWheels(オルトホイールズ)の創業者アリソン・サンダーは、ロボットの形が実に多様に広がっていることを指摘した。人型が主流になっているわけでは決してないという。
「私にとって、これはロボットの世界の魅力的な謎の1つです」とサンダーは言う。「誰もが人型ロボットを探しています。でも実際には、一種のカンブリア爆発のように、新しいロボットの形が一気に現れているのです。ロボットのミツバチもいれば、ロボットの魚もいます。自動運転タクシーのウェイモは、ロボット技術で私たちを運んでいます。誰もがロボットの到来を待っていますが、ロボットはもう来ているのです」。
シュプランガーが語ったもう1つのロボットは、私にはまったく毛色の違うものに映った。AIスウォーム(多数のAIやロボットが群れのように連携して動く仕組み)が今後どう使われうるかという議論とも、深く関わってくる話である。
「私たちは、ロボットがいずれは体の中や血管の中でも動けるようにしたいと考えています」とシュプランガーは言う。「ですから、ロボットはとても小さくなります。人型でないことは確かです」。


