コースラ主導で約79億円を調達、手術不要のAI操作技術を目指す
脳の信号からAIへの指示文を作るという構想は突飛に聞こえ、技術もまだ初期段階で、十分に実証されていない。それでもAIを巡る投資熱を受け、サビは有力投資家から資金を集めている。5000万ドル(約79億円)のシードラウンド(創業初期の資金調達)を主導したのは、ビノッド・コースラだ。コースラはOpenAIに最初の機関投資家として出資し、2026年の有力ベンチャー投資家ランキング「ミダス・リスト」で首位となった。サビが米国時間2026年10月8日に発表した。
コースラはフォーブスに「簡単にいえば、考えた内容をコンピューターに直接入力できるという発想は魅力的だ」と語る。さらに「文字入力は自然ではない。入力する前に、何を打つかを考えなければならない。脳の信号をその段階で捉えられれば、素晴らしい」と続けた。
有力ベンチャーキャピタル(VC)のアクセル、DSTグローバル、イニシャライズド・キャピタルもサビに出資した。OpenAIの元最高製品責任者(CPO)、ケビン・ワイルも出資者に名を連ねる。取引の事情を知る人物によれば、資金調達後のサビの企業価値は6億ドル(約948億円)と評価されたという。
脳にチップを埋め込むニューラリンク、サビは帽子型端末を開発
イーロン・マスクが率いるニューラリンクなどは、長年にわたり「脳コンピューター・インターフェース(BCI)」を開発してきた。BCIは、人間の脳とパソコンやスマートフォンなどの電子機器をつなぎ、脳の信号を機器の操作に利用する技術だ。企業価値420億ドル(約6兆6360億円)と評価されるニューラリンクでは、頭髪をそって頭蓋骨に穴を開け、脳にチップを埋め込む手術が必要になる。装着した人は、思考によってパソコンやロボットアームを操作できるようになる。
より体への負担が少ない方式を開発する企業もある。プレシジョン・ニューロサイエンスは、テープのように薄い装置を脳の表面に設置する技術を開発している。頭蓋骨を大きく開く代わりに、微細な切れ目を入れて装置を設置する。同社はビル・アックマンなどの投資家から4億3000万ドル(約679億円)を調達しており、直近の企業価値は10億ドル(約1580億円)を超えた。
ジェフ・ベゾスとビル・ゲイツが出資するシンクロンは、首の血管から装置を挿入し、脳の上方に留置する方式の開発に3億4500万ドル(約545億円)を調達した。OpenAIのCEO、サム・アルトマンは2025年、脳に装置を埋め込まず、超音波を使う方法を研究するマージ・ラボを設立した。OpenAIは2026年1月、マージ・ラボによる2億5000万ドル(約395億円)のシードラウンドを主導した。
先行企業の多くは、麻痺や神経疾患によって体を動かせない人を支援する技術に取り組んでいる。サビが目指すのは、より多くの人が個人用AIエージェントへ簡単に指示できるようにすることだ。コースラは「10億件もの脳手術はできない。手術室も足りない。同じことができるなら、脳手術よりはるかに優れた方法だ」と話す。


