だが、ここから先は気がかりな話になる。あらためて考えてみよう。米国は人的資本の争奪戦で引き続き優位にあるとはいえ、トランプはAI競争に関して矛盾した姿勢をとっている。トランプは「AIで勝つ者が勝利する」と主張する一方で、米国がAIで勝ち続けるために必要としている世界のAI人材を、積極的に受け入れようとはしていないのだ。
とくに、トランプ政権がビザ(査証)規制を厳しくした結果、外国人の優秀なテクノロジー人材が米国で働くのは以前よりもかなり難しくなっている。さらに、世界トップクラスのAI人材の出身国がどういう状況になっているかも考え合わせてみよう。
カーネギー・チャイナによれば、2022年、世界トップクラスの学士AI人材の46%が中国出身だった。3年後、その割合は57%に上昇している。一方、米国出身者の割合はと言えば、2025年に13%にまで低下している。
話はだんだんと深刻なものになってくる。米国は現状、AIでリードしているものの、中国は明らかに追い上げている。米中の差が縮まるなかで米国のビザ規制が厳しくなれば、AI人材の獲得競争は、じわじわと中国に有利な方向へ傾いていく。報告書はこう説明している。「中国出身の研究者のうち、最終的に中国で働く人の割合は、2022年の57%から2025年には69%に増えた」
AI競争とは何よりもまず人材をめぐる競争だという点は、いくら強調してもしすぎることはない。人材こそが勝負を左右する。世界中の優秀な人材は米国に引き寄せられる。こうした構図は米国に有利にはたらく。だがそれは、トランプがAIで「勝ちたい」という願望に見合った姿勢、つまり、米国がAIで勝つために必須の人材を受け入れる政策をとる場合に限られる。その人材には中国人も含まれる。


